南海地震の発生確率が上昇しました。
パンケーキクラッシュは日本で発生するか?
発生して10日以上になるトルコシリア地震ですが、時間が経過するにつれて被害の全容がみえてきました。
古い高層の建物の柱が粉々になり、パンケーキを重ねた様に層が連鎖的に崩壊する、パンケーキクラッシュが発生しています。
言葉としては建築構造の用語として認知されておらず、厳密にどの様な状態を指すのか、定義されている用語ではありません。
倒壊の激しさを伝えるため、誰かが作り出した造語と思われますが、壊れ方を端的に表現する良い造語かと思います。言葉そのものは、フリーのゲームソフトの様な安直さは感じてしまいますが・・・
ただ、マスコミの報道が日に々激しさを増し、大きな地震が発生すれば、日本でも起こり得ると発言する専門家も現れています。
用語の定義がなされていない語句が、独り歩きし誤解を招く様な事になれば、単に人心を不安にさせるだけでなく、扇動するようにマスコミが使い始めると社会不安にもなります。
パンケーキクラッシュが日本でも発生し得ると云うのは、果して本当なのでしょうか。
地震は起こってみないと分からないが
地震による建物の被害の大きさと、地震の大きさを示すマグニチュードは比例しません。震源の深さが大きく関係するためです。
また、地震時によく耳にする震度〇といった震度階も、建物の被害と一致しません。
阪神大震災以前は、震度階を建物壊れ方や人の感じ方で、気象庁の職員が直感的に判断して発表していましたが、客観的な評価になりづらいとの理由から、重力加速度(gal)を基準に算出されるようになりました。
その結果、同じ震度7でも阪神大震災や熊本地震では建物が多く倒壊したのに対し、東日本大震災では、地震で直接倒壊した建物は多くはありませんでした。
すなわち、今回トルコで起きた地震が、そのまま日本で起こらない限り、同一の比較をすることは難しいのです。言える事は今まで、大正時代に発生した関東大震災以降、パンケーキクラッシュを起こした建物は日本には無いという事です。
私は、同じ地震が発生しても、パンケーキクラッシュが発生する可能性は極めて低いと考えています。
建物は基本的に重力に抵抗する様に建てられています。逆に言えば地震の様な横向きに受ける力には脆いのです。
関東大震災では、当時日本の建築技術の粋を集めた、東京浅草の凌雲閣(通称12階)が倒壊しています。
私の知る限りの話しではありますが、今回発生したパンケーキクラッシュに日本で最も近い壊れ方をしているのがこの画像です。
建物の外側は残ってはいますが、殆どの床は崩れ落ちてパンケーキクラッシュの様な状態になっています。
日本の建物は関東大震災以降横向きの力に抵抗出来るよう早い時期から法整備がなされています。すなわち横向きの力に抵抗出来る建物が日本の場合殆どなのです。
下の写真は阪神大震災で倒壊した神戸市庁舎(昭和56年以降に制定された新耐震基準以前の建物)の写真ですが、中間層の6階部分が激しく崩壊してしまいましたが、建物全体がパンケーキを重ねた様な連鎖的に崩壊し続ける状態になることはありませんでした。
下の写真は、昭和39年に発生した新潟地震の写真ですが、層の破壊は起こらず建物全体が横倒しになっています。
下の写真は琵琶湖にあった建設途上のホテルです。完成を待たずに工事が中断され爆破解体に至った建物です。アメリカで行う爆破解体は、わざと柱に爆薬を仕込み一層目を破壊し、二層目以降は建物の自重で連鎖的に建物が壊れる、言ってしまえば人工的なパンケーキクラッシュを発生させるものですが、日本の耐震基準では、爆破させた建物は一層目は火薬により破壊されましたが、二層目以降は連鎖的に破壊することが出来ず、横倒し状態となりました。
日本の建物は外国の建物に比べ、頑丈に出来ていることを図らずも実証する結果となっています。
以上のことから、今回トルコで発生した地震と同規模同程度の地震が発生しても、また、それが現行の耐震基準以前の建物であったとしても、パンケーキクラッシュが発生する可能性は極めて低いと考えます。