南海地震の発生確率が上昇しました。
建築基準法は建築技術より遅れている
東日本大震災の余震と思われる地震が、先日起こりました。先日深度6強と云う大きな地震だった割に建物への被害が少なかった様です。
しかし、これは運が良かっただけにすぎません。
現行法を簡単に説明すると、木造住宅の場合、建物に横向きに力を加え、一定の力まで耐えられれば安全とみなすと言うものです。
一定の力とは、今まで日本で発生した地震の際に観測された、横向きの力(重力加速度galと云う単位で表されます)を基準にして、この程度なら大丈夫だろうと云う、力の決め方をしています。
工学の世界は、建築だけでなく全てにおいて、過去の事象に基づいて将来を予測する事を基礎にしています。車の安全性や、飛行機の安全性も同じ考えで、安全性を確認しています。
現行法で安全とされる最低値は400galとされています。気象庁の発表する震度階は、阪神大震災以前は建物の被害状況に応じて、目視で震度を決めていましたが、現在では、数値で決定する様になっています。建築基準法に規定される400galは気象庁の震度階に換算しますと深度6強です。
つまり、先日の地震では古い建物であれば倒壊家屋が発生しても、全く不思議ではないのです。
では、新築でも深度6強しか安全が担保されていないのに、古い家が深度6強の地震に耐える事が出来たのでしょうか。
ブランコはなぜ揺れる?
公園にあるブランコですが、小さな子供が漕いでも大きく揺れます。始めは小さな揺れですが、少しづつでも小さな力を与え続けると揺れ幅がどんどん大きくなって行きます。私たちはこれを普通の光景として何気なく見ています。
でもこれが、子供が地震で、ブランコが建物だったとしても同じ事が起こるのです。
僅かな力でもタイミング良く加え続けてやると、揺れそうにないものも揺れ始めます。世の中の全ての固形物には、固有の振動周期があるのです。固いものには短い振動周期があり、柔らかいものには長い振動周期があります。また、背の低いものには短い振動周期、背の高いものには長い振動周期があります。
木造の二階建ての建物の場合、振動周期は1~2秒の周期を持つと言われています。
仮に、現行法では耐えられるはずの、震度6強の地震でも、1~2秒の規則的な周期で1分も揺れが続けば、倒壊するのです。
今回の地震は、深度6強でしたが、たまたま、地震波の周期と建物の振動周期が一致しなかったため、400galの(現行法で安全が担保されている限度)地震に対し、古い建物でも、倒壊家屋が出なかっただけなのです。
結果的に、現行法の400galに耐えれば安全と云う、過去の安全検証法が正しかった事を、今回は意味しますが、震度6強の地震でも、建物の振動周期と地震の周期が一致してしまう地震が発生すれば、新築建物でも倒壊の危険性が出てくるという事の裏返しでもあるのです。