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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

塗る断熱材の本当の実力は?

2018年3月10日

テーマ:【エコ住宅】

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 断熱材 効果断熱材 DIY

ワイドショーで話題になった塗る断熱材。果たしてその実力は?


ワイドショーで報道されましたので、塗る断熱材についての問い合わせが多くなりました。私はまだ使用した事が無いので、とりあえずデータを集める事に。
インターネットで検索すると様々な会社やメーカーが色んな商品名で塗る断熱材を宣伝しています。宣伝文句は「冷やした鉄板に塗ると冷たさを感じない」「省エネ製品で賞を受賞した」「火にかけたフライパンに塗ると生卵が目玉焼きにならない」等々今ひとつ客観性に欠ける宣伝文句が並びます。
この辺から果たして本当に断熱効果があるのか懐疑的になって来ました。そもそも断熱材と云うのは、たとえ性能がが劣っていても厚みがあれば断熱効果は上がるのです。逆に云えば厚みを薄くするには余程の高性能が要求されるのです。

熱伝導率は0.013Kcal/mh℃

そこで、熱伝導率を公表しているサイトが無いか探してみました。すると一社だけ(TV報道されたメーカーではありません)熱伝導率を開示していました。それによると熱伝導率は0.013Kcal/mh℃でした。・・・・。
通常建築では国際単位系のW/mKを用います。JIS規格であるKcal/mh℃で表示されても他の断熱材と単純に比較する事が出来ません。
そこで、ネットでSI単位換算表と云うのを探し出し、SI単位系に換算してみました。すると、0.015W/mK。

おおおおおこれは凄い!

建築で用いる断熱材で高級断熱材とされるフェノール発泡樹脂の約二倍。
普及しているグラスウールの三倍の性能です。
これは話題になる訳だ。。。

しかし待てよ。。。

断熱材は厚み次第

グラスウールの三倍の性能があっても厚みはどうなの?
塗装品ですのでカタログによると厚みは0.6~1.0mmしかありません。壁の中に入れるグラスウールは100mmあります。つまりこの塗る断熱材は、グラスウールと同じ断熱効果を発揮しようと思えば34mm以上の厚みで塗らないと同じ断熱性能を出せないのです。
1mmの厚みでは、普及している100mm厚のグラスウールの1/33程度の断熱効果しかありません。

室温が6度も下がる?

それでもサーモグラフィーを使ったり温度計を用いたりして二階の室温が6度下がったと宣伝しているサイトもありました。なぜそんなに下がるのでしょうか。
これは想像の域を越えませんが、実験に用いた塗料が白い色をしていて輻射熱をカットしたのではないでしょうか。
熱の伝わり方には伝導・輻射・対流の三種類あります。そのうちの伝導に注目してグラスウールと比較していましたが、塗った塗料の色が白かった為に輻射熱をカットしたのだと考えれば納得できます。
但し、それであれば、高い塗る断熱材を使わなくてもホームセンターに行って白いペンキを買って塗れば事が足ります。

真相は実際に塗る断熱材を使ってみて、普通のペンキと比較してどの程度違いがあるのか検証しないと分かりません。
塗る断熱材メーカーの方がこのコラムを読まれて、反論がおありなら検証の場を与えて頂けませんかね^^

この記事を書いたプロ

福味健治

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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