現行法規では建物は震度6強で倒壊する。
現代の地図と古代の地図の比較
画像は言われるまでもない近畿地方の地図です。近畿に住む人であれば、自分の家がどこにあるか直ぐに判るでしょう。では下の写真はどうでしょうか?
これは大阪平野の古地図です。青い点線は縄文時代の海岸線です。赤い点線は古墳時代。今とは随分印象が異なります。上町台地から西側は海です。また上町台地の東側にも河内湖(河内潟)と云う入江が広がっていました。淀川や大和川からの土砂の堆積や、海水面の後退で現在の様な地形になっています。
この様な状況から上町台地以外は近世まで湿地帯・砂洲などで出来ていた軟弱地盤である事が伺えます。
古代の河内湖(河内潟)は現在の浜名湖の様な汽水域であった事が貝や魚の骨などから分かっています。今から2000年後には浜名湖も大阪平野の様に陸地化するのでしょう。
この地図は馴染みの無い地図ですが、実は奈良盆地の地図です。濃い水色の位置に湖がありました。現在の王寺周辺です。少なくとも飛鳥時代には存在していました。白い家の印は弥生時代の集落跡です。有名な唐古遺跡も見えます。弥生時代の集落跡は不思議なことに奈良盆地の中央付近にはありません。つまり水色の当たりまで湖又は湿地帯が広がり人が住めなかったのです。黄色い印は縄文時代の遺跡です。薄水色の地域まで後退します。古い時代ほど湖が大きく時代が下るにつれて陸地化して行った様子が伺えます。
地盤の強弱を示すJ-shis Map
これは状況証拠だけではありません。地盤調査からも伺えます。
下の地図はJ-shis Mapと云いまして、表層地盤と云うタグをクリックすれば固い地盤なのか軟弱な地盤なのか見る事が出来ます。
地盤が固いか軟弱かは、地震時の地盤がどれだけ揺れやすいかを示す指標となります。
見たい地域をWクリックすれば、別のウィンドウが開き一番下に地盤の増幅率が示され、数値が大きい程揺れが長く続く事を示しています。地図は青色が硬い地盤を示しており、赤が軟弱な地盤(地震の時揺れが長く続く地盤)を示しています。
古地図とよく見比べて下さい。湖や入江であった付近が二千年を経過してもやはり軟弱地盤として浮き上がって来ます。
不思議に思うのが大和川の現在の河川の位置です。
淀川が土砂を運んで大阪湾に堆積して言った為、軟弱地盤の中にあるのは当然ですが、大和川は比較的固い平地部分を流れています。
実は現在の大和川は人工の川なのです。江戸時代宝永年間に河内地方の氾濫を防ぐ為現在の位置に人工的に付け替えされています。その結果、良港であった堺港が大和川からの土砂で埋まり近世以降衰退していきます。
かつての大和川は、石川と柏原市で合流した後北上し、河内湖(河内潟)に注いでいました。川筋を何度も変えながら河内湖を陸地化させていきました。いまでも東大阪市に「川中」と云う南北に長い町名が残りますが、これもかつての川筋です。「川中」の地面を掘ると綺麗な川砂の層があり地下水も豊富です。
地盤と地震被害
地盤の増幅率を地図にするだけで、古代の地形が浮き上がって見えるのはなんとも不思議なものです。
違った見方をすれば、一概に家は坂道のある丘陵地に建てた方が地震の被害は少なく、平らな平野部に建てると地震の被害を受けやすいと云う事です。
全ての建物には、それぞれ異なる固有振動周期があります。地震波の波形と建物の固有振動周期が一致した場合、建物は共振して大きく揺さぶられることになります。地震波の波形周期が1~2秒前後のものが木造建物の固有震動周期を一致し易く、阪神大震災や熊本地震では1~2秒の周期が現れた為、多くの木造建物が倒壊しました。これをキラーパルスと呼びます。
この事から、地盤が軟弱で地震波の増幅率が高い地域は、それだけ長く揺れる訳ですから、地震に対してより危険であることが判ります。
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