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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

法律用語に制震と云う言葉はない

2013年3月23日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

世間に地震対策の一環として、制震装置が出回っています。大手のハウスメーカーも制震装置を取り付けた家を販売しています。
制震装置とはどの様なものを言うのでしょうか。名前だけで考えると、揺れを抑え込む力がありそうに思いますが、そうなんでしょうか?
制震装置は建物に加わる横向きの力に対し、衝撃を和らげる緩衝材の様な役目を果たします。緩衝材が粘着質の石油製品であったり、オイルダンパーであったり、ゴムで出来ていたりします。
法律的には制震装置についての定義がなく、建物を制震装置のみで支える事が出来ません。耐力壁と併用して耐力壁で支えきれない力が加わった時初めて効果を表します。
では耐力壁で支えきれない力が加わる時と云うのはどの様な時でしょうか。それは、剛性を保っていた耐力壁の限界を超えていよいよ建物が変形し始める時を指します。つまり外壁にヒビが入り初めて、ようやく効果が現れるのです。制震装置の宣伝広告を読んでいますと、制震装置を入れると外壁にヒビが入る事はない様な表現を目にしますが、それは制震装置の剛性が高いために変形しなかった事を指しているに過ぎません。制震装置が働いて外壁にヒビが入らなかったのではなく、制震装置が固くて外壁が変形しなかったのです。耐力壁を固くするだけであれば、高価な制震装置は必要ありません。制震装置の代わりに鉄のフレームを入れるだけでも効果があります。
また、壁に装着する構造であるため、二階の揺れ幅を抑える効果はあっても、一階の揺れ幅については、制震装置を入れていない時と全く変わりありません。
広告チラシを鵜呑みにして、制震装置を過信するのは禁物です。

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福味健治

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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