古代地図と軟弱地盤
昨日、政府中央防災会議の作業部会が南海トラフで最大級の地震が発生した場合の被害想定を発表しました。被害総額は220兆円、死者行方不明者32万人と云う、世界大戦並みの損失規模です。
南海トラフから離れている大阪でも、被害総額24兆円が見積もられています。府政予算8年分の規模です。大阪での被害の最も深刻なのは木造密集地帯の火災による焼失です。地震が発生すれば消火栓が使用できず、火の消しようがありません。火を消すことよりも火を出さない対策が必要になります。
被害総額が24兆円ならば、既存建物の防火対策にその半分程度の予算をつぎ込んでも、まだ前向きではないでしょうか。今後新築する建物は法規制が無くても防火地域並の防火性能を持った家を建てることが賢明でしょう。
この防災会議、南海トラフが動く事を想定している為か、防災の専門家は多数参加していますが、建築の専門家がいません。つまり建物が何処まで耐えて、どうなると倒壊に至るかのディティールが示されていません。ですので現状の耐震化率は79%と云う政府公式発表をそのまま準用しています。
政府の云う耐震化率の根拠は、建築基準法が見直された昭和56年以降に出来た建物が日本全体で79%に上ることを根拠にしています。誰でも冷静に考えれば判る事ですが、家には車検制度の様な定期的にメンテナンスを行う制度がありません。昭和56年以降の建物すべてが健全なはずがありません。木造住宅なんて30年もすれば住めなくなると、思っているはずなのに30年以上経過した建物が何を根拠に健全としているのでしょうか。
木造に限らず人の造ったもの全てに言える事ですが、適正なメンテナンスを行わなければ所定の性能を発揮出来るわけがありません。
それでも、220兆円とした被害想定は今までに比べると大胆なもので、評価に値します。欲を云えば南海トラフばかりに注目せず。都市圏で発生する直下型地震の被害想定も見直して欲しいものです。プレート型地震と直下型地震では被害の出方が全く異なります。
同じ震度7でも東日本大震災では、地震による倒壊件数は阪神大震災に比べ圧倒的に少ないものでした。これは阪神大震災以降、耐震化が普及した訳でも、雪に耐える頑丈な構造だったからでもありません。揺れ方が違ったのです。その事を考慮すれば、地震対策は全く異なったものになります。発生してから事態の収拾にお金を掛けるよりも、発生する前に手を打つ方が遥かに経済的なのは、国家も個人も同じです。
「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」委員名簿
主査 河田恵昭 関西大学社会安全学部・社会安全研究センター理事
副主査 田中 淳 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長
安部 勝征 東京大学名誉教授
石井 俊昭 石油連盟環境安全委員会安全専門委員会消防・防災部会長
井出 多加子 成蹊大学経済額部教授
今村 文彦 東北大学災害科学国際研究所副署長
尾崎 正直 高知県知事
亀井 淳 ㈱イトーヨーカ堂代表取締役
重川 希志依 富士常葉大学大学院環境防災緩急科長
中野 弘道 静岡県焼津市長
菅原 章文 一般社団法人中部経済連合会乗務理事
田中 里沙 株式会社宣伝会議取締役編集室長
田村 圭子 新潟大学危機管理室教授
福和 伸夫 名古屋大学減災連携研究センター長
村野 淳子 大分県社会福祉協議会専門員