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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

制震装置のコストパフォーマンスは本当に良いのか?

2012年11月24日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

制震装置のプロモーションビデオを見る機会がありました。耐震構造の壁と比較して建物に及ぶダメージを比較して制震装置の優秀性を記録したビデオでした。でもちょっと疑問が・・・

装置は柱を4本建てて三枚の壁が一列に並ぶ壁を造っています。三枚の壁の真ん中を除いた両側に構造用合板を打ち付けています。そこに震度7の振動でその壁を揺らすと壁は見事に倒壊しました。
次に、真ん中の空いたところに制震装置を取り付けて揺らす実験をしています。すると壁は倒壊せず損傷もありません。「どうだ!制震装置は強いだろ!」と云わんばかりのビデオでした。

でもこれでは、制震装置が働いた事になりません。制震装置はその構造的に、建物が変形しないと効果が表れない装置です。壁面が無事だったのは単に装置の剛性が高いため(制震していない)損傷も倒壊もしなかっただけでは?と云う疑問です。そうであれば、一台十数万円する制震装置を取り付けなくても、その位置に一枚2千円程度の合板を張り付けた方が安くて丈夫ではないかと云う事です。

ビデオは制震装置が有効に働いた事を証明していませんし、同じ剛性の壁同士での比較もしていませんので制震装置が強い証明にもなっていませんでした。

但し、間口の狭い木造3階建ての家では有効に働くと思います。何故ならば、震度7の揺れを受ければ間違いなく耐力壁が変形するくらいのダメージを受けると思われるためです。間口の狭い木造3階建ての実大実験では耐震等級2の建物が倒壊しています。あの時制震装置を取り付けていれば倒壊は防げたと思うからです。

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