南海地震の発生確率が上昇しました。
名古屋の開業医の先生から、木造免震住宅のご相談を頂きました。
色々なルートで木造免震住宅が設計出来る人を探しておられた様で、中部地方で見つける事が出来ず、回りまわって私に問い合わせが入ってきました。
それまでに、様々な建築の専門家の方からご意見を頂いたそうです。
「免震装置(支承)は費用が数百万円掛かり制震装置なら数十万円で済む」
「いつ発生するか判らない地震で、人を脅かして仕事を受注する様な業者にロクな業者はいない」
「免震住宅でなくても、地震に強い家は幾らでも造れる」
「技術的に未開発で実際に免震装置が作動するか疑わしい」
「縦揺れには全然効果が無い」
「周りが被災しているのに、貴方だけ助かっても妬まれるだけす。」
等々の事を繰り返し聞いたとの事でした。
それを聞いて、免震装置に対して建築の専門家でも無理解と偏見の目で見ているのだと痛感しました。
免震装置は確かに高額です。しかし被災すれば復旧費にそれ以上の費用が発生します。「被災しない方に目を張って、バクチに負けたのだから、それから復旧費を掛ければ良い」と考える事の出来る方はそれでも良いと思います。しかしお医者さんは、バクチが出来る立場にありません。被災すれば医師として人々を助ける仕事そのものが出来なくなります。
人を脅かしていつ発生するか判らない地震を商売道具にしている認識は私にはありません。チラシ等で免震装置なんて見たくも無い人に強引に押し売りする様な情報発信はしていません。免震に興味のある人が、情報不足で困らない様な情報しか発信していないつもりです。
耐震工法でも地震に強い家を造る事が出来るのは事実です。但し震度7の地震を震度7以下に抑え込む家にはなりません。制震装置を用いても震度7が震度7以上にならない様に制御するのが精一杯です。免震装置は震度7を震度4(地震力を1/16程度に減衰)にまで減衰させることが出来るのは免震住宅だけです。
http://www.jin.ne.jp/oado/mensin.html
免震装置と類似の本当に免震するかどうか疑わしい、装置が大臣認定も取得せず堂々とマスコミを賑わしているのも事実です。しかしIAU型免震支承は大臣認定を取得した、完成された免震装置です。全国で3500棟建設され、東日本大震災でも建物損傷ゼロです。
縦揺れに抵抗しようと思えば、車のサスペンションの様な機構を組み込めば対応出来ます。しかし、これをしないのには理由があります。地震の度に下から突き上げる様な衝撃を感じたとの証言を数多く聞きますが、実際に地震波として観測された縦揺れの強さは重量の1.2倍程度までです。例えば上りエレベーターに乗った程度の感覚です。建築基準法では地震の様な短期の荷重は通常の荷重の1.5倍まで耐えられる様に設計されています。サスペンションを取り付けなくても、縦揺れには何の支障もありません。
医者と云う職業は周りが被災しても、自分は自分の事を放っておいても、他人を救わなければなりません。だから自宅については万全を期したいとの事でした。医師以外にも消防士・警察官・公務員・自衛隊・報道関係・通信関係・電力会社・ガス会社・水道業者・建設関係者・運輸業等々地震が発生すれば、人の為に働かなければならない人は大勢います。その人達の家が被災していて家族の消息も判らない様な状態で他人の為に働く事が出来るのでしょうか?
ご自分の立場や、実際に被災した場合の事を考えれば、免震住宅も視野に入れて住宅新築を考えるべきかと考えます。