お金を掛けずに地震に強い家にする方法
●免震装置の限界を理解する
免震住宅は、地震の揺れを建物に伝えない、建築基準法を超越した画期的な工法ですが、その為には大臣認定を取得して、性能の限界を見極めないと、普通の建物よりも危険になる事もあります。
以前に、免震住宅がいくら作動しても、隣家が火事になれば類焼の危険があると書きました。
http://mbp-japan.com/osaka/oado/column/13132/
同様に地盤が弱ければ、免震住宅は一般の建物よりも危険になります。
免震住宅は基礎と、基礎より上の構造を切り離す事が前提になっていますから、地震時でも基礎が水平を維持することが絶対条件となります。その条件を満たそうと思えば洪積層の地盤の上に建てるか、沖積層の地盤でも液状化の発生しない事を確認した上で、地盤改良を施す必要があります。
そうしなければ、画像の様に液状化現象で家が傾くと、ズルズルと家がずり落ちてしまいます。
折角、高額な免震装置を取り付けてもこうなってしまえば意味がありません。
●免震住宅に大臣認定が必要な訳
免震住宅は、建築基準法に規定されていない工法ですので、大臣認定を取得しなければ建築出来ません。
大臣認定を取得しようと思えば、国交省が指定する評価機関で免震装置の性能評価を行う必要があります。実物大実験を何度も繰り返し、想定される様々な条件でも性能を発揮出来るか検証する必要があるのです。
転がり免震支承の場合、
1、想定震度以上の揺れに遭遇した場合、建物倒壊回避の手段はあるのか?
2、構造計算で想定される以上の偏芯荷重が建物に掛かった場合どうなるのか?
3、転がり免震支承に砂等の異物が挟まった場合正常に免震するのか?
4、縦揺れに対して免震装置が異常な動きをしないのか?
5、台風等の他の力が働いた場合、しっかり抵抗するのか?
等々の実験を重ね、安全を検証しています。
その中で、
1、液状化現象が発生する地盤では、免震装置を用いてはいけない。
2、火災に対しては、一般建物と変り無い。
3、免震装置が作動した場合、塀等の外構との間に人が挟まれる危険がある。
4、免震を妨げる固定物を免震装置の可動範囲内に設置してはならない。
等々の限界が見えてきます。その限界を知り、施工条件を定めて、初めて大臣認定取得出来るのです。免震装置の安全を検証し、同様に限界も知らなければ、安心して使用する事は出来ません。
●アイデアだけで、製品化してはいけない。
国交省告示で明示されている、免震支承は「転がり」「滑り」「ゴム」の三種類です。免震装置開発メーカーがその三種類の中から、軽い建物・重い建物・大きな建物・小さな建物・変形した建物・直方体の建物等々どの様な種類の建物に、どの様な免震装置が有効なのか研究を重ねています。
アイデアだけなら、空気で浮かせる・水に浮かせる・バネで吊るす・柔らかなもので包む等々様々な工法が考えられます。どの様なアイデアでも、性能評価を行い装置の安全性を実証するのは勿論のこと、装置の限界を知る事が大切なのです。工業製品である以上必ず装置には限界があります。その限界を確認しないまま製品化することは許されません。