宅建に暗記だけで受かっても実務で使えない?理解重視のマンツーマン講座
「実家を相続したのですが、この家はどれくらいの価値があるのでしょうか」。私のところには、こうしたご相談がよく届きます。売るのか、貸すのか、しばらくそのままにしておくのか。どれを選ぶにしても、まず住宅の資産価値を知っておきたいというお気持ちは、とてもよく分かります。
ただ、そのときに私がいつもお伝えしているのは、価格に対する画一的な正解がどこかに用意されているわけではない、ということです。同じ築20年の住宅でも、評価は大きく分かれます。今回は、ご相談の場でよくいただく質問に沿って、その理由をお伝えいたします。
【なぜ同じ築20年でも価値に差がでるのか】
築年数が同じなら価値も同じくらいだろう、という感覚はごく自然なものだと思います。けれども実際には、同じ築20年でも、評価には大きな開きが出ます。
住宅の価値を左右するのは、駅からの距離や周辺環境といった立地、間取りや設備が今の暮らし方に合っているかどうか、そしてこれまでどのように手入れされてきたかという管理の状態です。築年数の同じ住宅であっても、この積み重ねにより価格差が生まれます。
私が現地でまず確かめるのは、立地と管理の状態です。この二つは、住む人の努力であとから変えることが難しいからです。間取りや設備は費用をかければある程度変えられますが、駅までの距離を動かすことはできません。
その駅距離も、できればご自身の足で歩いてみてください。広告に載る徒歩分数は、不動産の表示に関する公正競争規約にもとづき、道路距離80メートルを1分として計算したものです。信号待ちや坂道、踏切の待ち時間までは含まれていません。そのため表示と実感がずれることは珍しくないのです。
住まいの消費者教育研究所で行っている住まい教育の講座でも、私が繰り返しお伝えしているのは、この「自分の目で見て、自分で考える」という姿勢です。
【マンションと戸建で価値の見方は違う】
同じ「住宅」でも、マンションと戸建てでは価値を支えているものが違います。マンションの価値は、専有部分の中だけで完結しません。建物全体の管理が行き届いているか、修繕の計画や積立てが将来まで見通せる形になっているか。そこが重要になってきます。
ですから私がマンションを見るときは、部屋の中よりも先に、共用部分と管理組合の運営に目を向けます。掲示板の貼り紙、廊下やごみ置き場、駐輪場まわりの様子には、日々の管理の質が表れるからです。
一方、戸建では土地が価値の中心になります。建物の評価は年数とともに下がっていきますが、土地は残ります。同じ予算で購入しても、マンションと戸建とでは価値の減り方の形が違う、と考えていただくとよいと思います。
どちらが優れているという話ではありません。まず自分たちの暮らし方に合うのはどちらかを考え、そのうえで価値の見方を当てはめていく。この順番を、私は大切にしています。
ここで言葉をひとつ整理しておきます。資産価値とは、その住宅が市場でいくらで売れるかという評価のことです。これに対して居住価値とは、そこで暮らす人にとっての住み心地の良さを指します。二つは一致することもあれば、そうでないこともあります。
【リフォームすれば価格は上がるのか】
これも、売却を考え始めた方から本当によく受ける質問です。手を入れれば、その分だけ高く売れるのではないかと考えるのは自然なことだと思います。
しかしながら、かけた費用がそのまま価格に上乗せされるとは限りません。価格を決めるのは、最後は買い手だからです。買い手にとって魅力に映る工事であれば評価につながりますが、そうでなければ支出だけが残ることもあります。
ここで、先ほどの資産価値と居住価値の区別が生きてきます。断熱や水まわりの改善は、住み心地、つまり居住価値を確かに高めてくれます。それが売却価格という資産価値にどこまで反映されるかは、また別の問題なのです。
そのうえで私がお伝えしたいのは、居住価値を犠牲にしてまで資産価値を追わないでいただきたい、ということです。住まいは、まず住むための場所です。売るときの評価を気にするあまり、今日の暮らしやすさを削ってしまうのは順番が逆だと、私は考えています。
売ることを前提にした工事であれば、着手の前に、周辺で似た条件の住宅がどのくらいで成約しているかを確かめるところから始めてみてください。
【「売りやすい家」と「売りにくい家」の差】
売りにくい家とは傷んだ家のことだ、と思われがちですが、私の見方は少し違います。買い手が判断できない家が、売りにくい家になりやすいのです。
買い手は、見えない部分に不安を抱きます。いつ、どこを直したのか。点検やメンテナンスの記録が残っているか。マンションであれば、管理組合の議事録や修繕の計画を確かめられるか。こうした材料がそろっている住宅は、買い手が納得して判断できます。
住まいの消費者教育研究所が行動指針に掲げているのは、消費者と事業者のあいだにある情報格差の解消です。売却の場面も同じで、売り手が持っている情報を買い手に分かる形で渡せるかどうかが、売りやすさを分けていきます。
ですから、住まいの手入れの記録を残しておくことは、そのまま将来の売りやすさにつながります。住宅を長く使い、次の世代に住み継いでもらうためにも、この積み重ねには意味があると考えています。
相続した実家の場合は、当時の図面や工事の書類がどこにあるのか分からない、ということも少なくありません。まずは家の中に残っている書類を探すところから、一緒に始めていきます。
【買った価格と売れる価格はなぜ違う】
誤解がいちばん多いのは、おそらくここです。買った価格と売れる価格は、一致しないことのほうが多いのです。値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります。
難しいのは、値下がりしたときです。買った価格が頭から離れず、その金額にこだわっているうちに売る時期を逃してしまう。そうした場面を、私は何度も見てきました。
中長期で見たとき、価格の上昇が見込まれる地域は一部にとどまり、多くの地域では下がっていくのではないか。ただ、これはあくまで私自身の見方であり、地域や物件によって事情は異なります。それでも、売ると決めているのであれば時期は早いほうが選べる道は多くなるとお伝えしています。
では自分の住宅がいくらで売れそうかは、どう調べればよいのでしょうか。手がかりのひとつが、実際の成約価格を消費者向けに公開しているレインズ・マーケット・インフォメーションです。地域や最寄駅、面積、築年数で条件を絞り、似た住宅がいくらで成約したのかを自分で確かめられます。
不動産会社から査定額を受け取る前に、一度ご自身で確かめておくだけで、提示された金額の意味が違って見えてきます。迷ったときの相談先については、こちらのコラムでも触れています(https://mbp-japan.com/osaka/kikuchi/column/5235919/)。
住宅の資産価値は、買うときに一度決まって終わるものではありません。買ったあとにどう変わり、売るときにどう評価されるのか。そこまで見通しておくことが、住まいを長く使い、次の世代へ住み継いでもらうことにつながっていきます。
住まいの消費者教育研究所では、住まい教育の考え方にもとづいて、消費者の側に立ってご相談をお受けしています。相談サービスの内容はこちらをご覧ください(https://mbp-japan.com/osaka/kikuchi/service1/)。
セカンドオピニオンとしての活用も歓迎です。まずはお気軽にご相談ください。
【まとめ】
住宅の価値は、誰かに教えてもらうものではなく、自分の目で確かめながら見極めていけるものだと私は考えています。その積み重ねが、住まいの長寿命化にもつながっていきます。
・相続した実家の資産価値や、売却・利活用の方向性を知りたい方
・売却するかどうか、時期も含めて判断に迷っている方
・不動産会社の査定額をどう受け止めればよいか分からない方
ご相談・お問い合わせはフォームらから承ります。


