夫婦二人60代の住まいの終活5つの質問|住み替え・リフォーム・実家の悩み

菊池浩史

菊池浩史

テーマ:空き家と住まいの終活

「子どもが独立して夫婦二人になったけれど、この家にこのまま住み続けていいのだろうか」。60代のご夫婦から、こうしたご相談をよくいただきます。

ほかにも、リフォームはどこまでやるべきか、住み替えという選択肢はありか、子どもが戻ってこない実家をどうするか、など住まいの終活にまつわる疑問は実にさまざまです。

今回は、私が実際によく受ける質問を5つ取り上げ、お答えしたいと思います。

Q1 夫婦二人になったら、今の家は必要ですか?
実のところ、この質問に「はい」「いいえ」ですぐにお答えすることはできません。ただ、私がいつもお伝えしているのは「今の家に住み続けること」が本当に最善なのかを、一度立ち止まって考えてほしいということです。

人生100年時代と言われる今、60代を過ぎてもまだまだたっぷりと時間があります。そして人生の後半に入ると、家族構成や身体の変化、仕事、相続など、住まいを取り巻く環境は大きく変わっていきます。子育てのために選んだ家が、夫婦二人の暮らしやこの先の身体の変化に合っているとは限りません。

私は30年近く、都市再生機構でUR賃貸住宅の管理運営に携わり、その後は有料老人ホームの管理運営にも従事してきました。多くのシニアの皆さまの住まいと暮らしに触れる中で感じてきたのは、住まいは「今」だけでなく「これから」に合わせて考える必要がある、ということです。

住み続ける、リフォームする、住み替える、手放す。人生の後半を見据えて、この4つの選択肢を並べて考えてみることが、最初の一歩になると私は考えています。

Q2 60代のリフォームは、どこまですべきですか?
リフォームの範囲を考える前に、私はまず「この家に住み続けるのか?」を考えることをお勧めしています。どこまで手を入れるかは、その答えによって変わってくるからです。

ご相談では、階段や浴室、トイレなど、将来の身体の変化に伴う住まいのリスクを心配される声をよく伺いますが、こうした不安への対応策は、大がかりな工事だけとは限りません。軽微なリフォームで不安が解消する場合もあれば、福祉用具をレンタルしたり購入したりすることで、リフォームそのものが不要になる場合もあります。

この先その家に何年住むのか、その後その家をどうするのか。住み替えや手放す可能性も視野に入っているなら、リフォームの範囲もそれに合わせて考える必要があります。

また、建物の状態を知っておくことも大切です。私が監修した「お家のリレーノート(出典:お家のリレーノート、NACS西日本支部 消費者教育研究会、2024年7月発行)」では、新耐震基準の建物かどうか(建築確認日が昭和56年6月1日以降か、耐震改修済みか)を確認する項目を設けています。定期点検やリフォームの履歴も書き出しておくと、判断の材料になります。

Q3 「住み替え」はどう考えればよいですか?
住み替えと聞くと施設への入居を思い浮かべるかもしれませんが、住み替え先は高齢者住宅や施設とは限りません。都心に近い駅近のマンションが合う方もいれば、賃貸住宅、地方移住、二地域居住、あるいは親子で近くに住む「近居」という住まい方が安心につながる方もいます。

私は大学院で、高齢者住宅に関する情報の非対称性や、住み替えに関する意思決定について研究してきました。高齢期の住まい選びは、服選びとは違い、何度も繰り返し経験するものではありません。だからこそ、十分に比較しないまま決めてしまわないよう、選択肢を広げて考えていただきたいと思っています。

もう一つ忘れてはいけないのが、住み替えた後の自宅です。住み替え前の家をそのままにしておけば、空き家になってしまいます。

住まいの終活とは、住宅の所有者やその家族などが元気なうちに、家族や信頼できる知人・専門家と相談して、自宅や実家のあり方を検討し、実践することです。その狙いは、自宅や実家を空き家にしないこと、あるいは空き家の期間を短くすることにあります。

住み替えを考えるなら、住み替え先と同時に今の家をどうするかもセットで考えておきたいところです。

Q4 子どもが戻らない実家は、残すべきですか?
これも本当によくいただく質問です。「子どものために家を残してあげたい」というお気持ちは、自然なものだと思います。ただ、子どもが独立して実家に戻ってくる可能性が低い場合、家を残すことが本当に子どものためになるのかは、一度考えてみる必要があります。

誰も住まない家でも、固定資産税などの維持費はかかり続けますし、放置された空き家は家計の負担になるだけでなく、近隣への迷惑にもつながりかねません。法改正により行政の空き家への規制も厳しくなり、放置された空き家の固定資産税が最大6倍になるケースもあります。

よくある誤解が、「今は急ぐ話ではないから、なんとかなるだろう」という考え方です。けれども、なんとかならないこともあります。今は急ぐ話ではなくても、いずれ困ったことになる話なのです。

そのため私は、「自宅をどう残すか」ではなく「どう活かすか」を考えることが重要だとお伝えしています。住む人がいなくなっても、貸す、売るといった方法で、家が次の誰かの暮らしに活かされる道もあります。

※空き家の考え方については、こちらのコラムでも取り上げています(https://mbp-japan.com/osaka/kikuchi/column/5133767/)。

Q5 売る・貸す・相続する、判断の基準は?
最後は、自宅の将来の選択肢をどう選ぶかという質問です。結論からお伝えすると、正解は一つではありません。判断の軸になるのは、ご本人とご家族の「住まい観」です。

住まい観とは、いつ頃までに、誰と、どこで、どのような住まいで、どのような暮らしをしたいか、そしてそのためにどうするか、という将来の住まい方に対する考えのことです。住まい観は、将来変わることもあり得ます。

お家のリレーノートでは、お家の選択肢を4つに整理しています。わたしや家族が住むならリフォームや建て替え、誰も住む予定はないが手離したくないなら賃貸住宅などの有効活用、手離したいなら売却、活用や売却の意向もないなら維持管理です。自分たちの住まい観と照らし合わせると、進む方向が見えやすくなります。

お家のリレーノートとは、自宅や実家の現状と課題を把握して関係者で共有し、次世代へどう引き継ぐかを記録することで、住まいの終活に役立てるノートのことです。登記や境界、住宅ローンの残債、近隣との申し合わせまで書き出していくと、考えや想いの棚卸しになります。(なお、リレーノートには遺言のような法的効果はありません。)

避けていただきたいのは、「いつか始めよう」とついつい先送りすることです。そしてもう一つ、一人で考え込まないこと。家族や知人、専門家に相談し、多様な意見や切り口を知ることで、自分では気づかなかった選択肢が見えてきます。私は不動産会社などと資本関係のない独立した立場で、住まいのセカンドオピニオンとしてご相談をお受けしています。

住まいの終活は、家を「どう残すか」ではなく「どう活かすか」を考えることから始まります。60代の今こそ、住み続ける、リフォームする、住み替える、手放すという選択肢を、ご家族と一緒に並べてみてください。

住まいの消費者教育研究所が、「お家のリレーノート」を使った考えや想いの棚卸しからお手伝いします。

【まとめ】
家は「残すもの」から「活かすもの」へ。考えや想いを早めに棚卸ししておくことが、ご自身にもご家族にも納得のいく住まいの選択につながると、私は考えています。

・子どもが独立し、夫婦二人の暮らしに合った住まいを考え始めた60代の方
・今の家のリフォームをどこまで行うべきか、住み替えも含めて迷っている方
・子どもが戻る可能性が低い自宅について、売却・相続・賃貸などの選択肢を整理したい方

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菊池浩史

住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

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