住まいの購入・売却・空き家、迷ったときはセカンドオピニオンへ
「いい不動産会社の見分け方を教えてください」。住まいのご相談をお受けしていると、これは本当によくいただくご質問です。不動産会社選びは、住宅の購入でも売却でも、賃貸でも、相続した実家の扱いでも、どこかで一度は向き合うことになります。
不動産会社は数が多く、サービス内容も手数料も一社ずつ異なります。取引額は大きいのに、比べるための物差しが手元にありませんから、迷うのは当たり前だと思います。
このご質問にお答えするとき、私は会社の規模や知名度の話から入りません。先に確かめるのは、「その業者がどの立場からあなたに受け答えしているのか?」という点です。ここでは、私が実際のご相談の場で使っている四つの判断軸を、順番にお伝えします。
【会社を選ぶ前に、自分の物差しをつくる】
先日ご相談をいただいたのは、お母さまがお一人で暮らしていた実家を相続された、70代の方でした。将来はご自身の息子さんが住む予定で、それまでの間をどう活かすかを考えておられました。いちばん困っておられたのが「どこの不動産会社に仲介をお願いすればいいのか、その選び方が分からない」という点だったのです。
ただ、会社を紹介してほしいというご依頼ではありませんでした。業者に頼むにしても、自分自身の考えや方針を持ったうえで頼みたい。そのお気持ちが、とても強い方でした。
私はこの姿勢を、いちばん大事な出発点だと考えています。方針がないまま相談に行くと、示された提案が自分に合っているのかどうかを判断する物差しがありません。物差しは、依頼する前に自分の側に用意しておく。私が伴走の最初に時間をかけるのは、いつもこの部分です。
伴走支援とは、答えを一方的に示すのではなく、ご依頼者と同じ方向を向いて、一緒に道を歩みながら課題を解決していく関わり方のことです。会社選びも、この歩き出しのところから始まります。
【規模よりも、その物件の用途を日常的に扱う会社か?】
「大手と地元の会社、どちらを選べばいいですか?」。これも、よくいただくご質問です。
先ほどの70代の方のケースでは、結論として、賃貸住宅を専門に取り扱う不動産会社に仲介をお願いしました。募集から入居後の管理までを日常的に扱っている会社に頼みたい、という考えからです。
規模や知名度を先に見る方は多いのですが、私が先に見るのは、その物件の用途をふだんから扱っているかどうかです。売買を中心にしている会社と、賃貸の募集や管理を日々扱っている会社とでは、持っている情報も段取りも違います。空き家を貸したいときに賃貸専業の会社を候補に入れるのは、そのためです。
なお、取引のある金融機関に紹介を頼む、という方もいらっしゃいます。これも選択肢の一つですが、紹介してくれる相手がどの立場にいるのかは、二つめの軸で確かめておきたいところです。どちらが優れているという話ではなく、自分の目的に対して守備範囲がマッチしているかを見るということです。
このケースで、リフォームの範囲や契約の形をどう決めていったかは、別のコラムに詳しく書いています(https://mbp-japan.com/osaka/kikuchi/column/5233981/)。
【査定価格の高さではなく、根拠を確かめる】
「いちばん高い査定を出した会社が、いい会社なのでしょうか」。売却のご相談では、この問いが早い段階で出てきます。
あわせて「会社によって査定価格が違うのはなぜか」というご質問もいただきます。私は不動産鑑定士として価格に向き合ってきましたが、将来の価格を言い切ることはできません。できるのは、判断の材料を並べ、比較の軸を一緒に整理することです。ここを曖昧にしないほうが、かえって安心につながると考えています。
ですから査定書を受け取ったら、金額の大小より先に、その根拠を見ます。どの取引事例をもとにしているのか、どこを増やし、どこを減らしたのか。どのくらいの期間で売れる前提なのか。質問したときに、資料をもとに答えてもらえるかどうかが分かれ目になります。
「手数料の安さだけで選んでよいか」というご質問にも、同じ見方でお答えしています。金額そのものではなく、その金額で何をしてもらえるのかを並べて比べる。そうすると、比べるべきものが金額から中身に移ります。
私の元へのご相談は、不動産会社等へ行く前と、行った後の両方の方から寄せられます。行った後であれば、提案や見積もり・査定金額は妥当なのか、契約書や重要事項説明書を見てほしい、といった内容です。迷いを抱えたまま署名してしまう前に、立ち止まっていただきたいところです。
【媒介契約の形と、担当者の答え方を確かめる】
五つめは、契約の形です。ここは情報の流れ方を決める部分なので、私は説明に時間をかけます。
売却を依頼するときの媒介契約には、専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の三つの形があります。専属専任媒介と専任媒介は依頼先が一社に限られる代わりに、宅地建物取引業法で指定流通機構への物件登録と、依頼者への定期的な業務報告が義務づけられています。一般媒介は、複数の会社に同時に依頼できる形です。
「囲い込み」という言葉を耳にして、不安になる方もいらっしゃいます。囲い込みとは、売却を依頼された会社が他社からの問い合わせに応じず、自社で買主を見つけようとする行為を指す言葉です。
気になる場合は、登録を証する書面を見せてもらう、販売活動の状況を定期的に報告してもらうといった確認の手順を、契約前に取り決めておくと安心です。
実際にどの媒介契約が合うかは、物件の条件や売り急ぐ事情があるかどうかで変わりますので、ここは一律の正解を置かないほうがよい場面だと考えています。
また、担当者については、説明を求めたときの答え方を見ます。分からないことを分からないと言えるか、根拠を資料で示せるか、など肩書きや経験年数よりも、私はこちらを重く見ています。
先ほどの70代の方とは、以前に私が開いた空き家活用セミナーでお会いしていました。セミナーや講座の場に足を運び、話す内容や立ち位置を確かめてから相談先を選ぶことも、確かな方法の一つだと思います。
大切なのは、「なぜその会社に頼むのか」をご自身の言葉で説明できる状態になっていることです。そこまで来ていれば、提案を受けたときにうのみにせず、自分の軸で判断できます。
【迷いが残るときは、決める前に第三者へ】
セカンドオピニオンとは、取引の当事者ではない専門家が、中立的・専門的な立場から別の見方をお示しすることをいいます。近年では、住まいの分野でも少しずつ知られるようになってきました。
先ほどの70代の方からいただいた言葉で、今も印象に残っているものがあります。物件の立地そのものに問題はなかったけれど、不動産会社に依頼するにあたっては不安がいくつもあった。それが一つずつ解けていったことの安心感が大きかった、というお話でした。
決める過程で不安がなくなっていくことに価値を感じていただけたのだと、私は受け止めています。
住まいの相談サービスの詳しい内容は、こちらをご覧ください(https://mbp-japan.com/osaka/kikuchi/service1/5002495/)。
【まとめ】
不動産会社選びは、いい会社を探し当てる作業というより、自分の物差しを持ってから相手に会うための準備だと私は考えています。物差しが手元にあれば、迷いは一つずつ小さくできます。
・大手と地元の会社、どちらに頼むべきか迷っている方
・査定価格や見積もりの内容を、別の立場から確かめたい方
・媒介契約や重要事項説明書の内容に、不安が残っている方
住まいの消費者教育研究所では、「大人の住まい教育」の考え方をもとに、住まいのご相談を全国から承っています。大人の住まい教育とは、住まいについて体系的に学ぶ機会がないまま判断を迫られる方が、自分にとって何が大切かを考え、自分で選び、決める力を身につけるための学びのことです。
不動産会社の選び方も、その入り口の一つだと考えています。対面のほか、オンラインやお電話でもご相談いただけますので、まずはお気軽にご連絡ください。


