猛暑と光熱費に悩む方へ|既存住宅の断熱リフォームと補助金の確認ポイント

菊池浩史

菊池浩史

テーマ:~バリアフリーと温熱環境~

今年の夏も、エアコンをつけているのに部屋がなかなか涼しくならず、設定温度を下げるたびに電気代が気になったという方は多いのではないでしょうか。暑い季節が長くなるなかで、冷房を我慢して節約しようとしても限界があり、かといって使い続ければ光熱費の負担は重くなっていきます。

このように、夏の暑さや冬の寒さを、エアコンの使い方だけで解決しようとするのは無理があります。

【暑さや寒さの悩みは、住まいの断熱性能とも関係しています】
室内の暑さや寒さは、冷暖房の能力や使い方だけで決まるものではありません。窓や壁、床、天井を通じて熱がどれだけ出入りするか、つまり住宅の断熱性能も、暮らしの快適さに大きく関わっています。例えば、エアコンを長時間使っても室内が暑いと感じる場合、外の熱が入りやすい住まいになっている可能性があります。

新築住宅の断熱性能に関する基準は、これまで段階的に引き上げられてきました。2025年には、新築住宅の省エネ基準への適合が原則として義務化されています。

ここで区別しておきたいのは、この義務化と、断熱等性能等級として示される各段階の性能水準は別の話だという点です。以前に建てられた住宅が現在の新築の基準を満たしていなくても、それだけで直ちに違法になるわけではありません。

ただ、建てられた時期によっては現在の水準との間に性能の差がある可能性があり、そこに暑さや寒さの悩みの原因が潜んでいることもあります。

私は都市再生機構でUR賃貸住宅の管理運営に30年近く携わり、集合住宅での住まいと暮らしについて、多くの入居者の皆さまから学んできました。住まいの性能や維持管理は、多くの方にとって経験を積む機会が少ない分野です。暑さや寒さを我慢する暮らしから、住まいの性能を見直す暮らしへと視点を移すことが、悩みを解決する出発点になると私は考えています。

【築年数の古い住宅や、光熱費を抑えたい方に関わる問題】
この問題が特に関係するのは、まず築年数の古い住宅にお住まいの方です。夏は室内が暑く、冬は足元が冷え、エアコンを使っても部屋によって温度差が大きいといった悩みを抱えながら、自宅の断熱性能を把握していない方もいらっしゃるでしょう。

築年数だけで断熱性能が決まるわけではありませんが、建築時期は性能を確かめるための一つの手掛かりになります。

また光熱費を抑えたい方にとっても、無関係ではありません。定年退職後など日々の支出を抑えたい時期には、健康のために冷暖房を使いたい気持ちと、費用への心配との間で迷われる方もおられます。

さらに高齢の方や健康面が気になる方の場合、冬の浴室や脱衣所の寒さ、暖かい居室から寒い廊下や浴室へ移るときの温度差、夏の室内での熱中症なども気がかりな点です。とはいえ、断熱リフォームだけで病気や事故を防げるわけではないため、ここは適切な冷暖房や換気も含めて考える必要があるかと思います。

その他にも、浴室やキッチンの改修、内装の一新を予定している方や、窓の結露や冷気が気になっている方、建物全体を改修するか必要な部分だけにするか迷っている方にも、断熱の見直しは関わってきます。

このように、住まいの断熱性能は特定の年齢層に限った話ではなく、幅広い方の暮らしにつながるテーマです。

【補助金や工事の効果について、知っておきたい注意点】
国などが実施する住宅の省エネ化を支援する補助制度を活用できれば、断熱リフォームの費用負担を軽減できる可能性があります。ただし補助制度は、年度や事業によって対象工事、申請期間、予算、申請方法などが異なります。

そのため工事を始める前に対象となる制度を確認し、対象製品や工事内容に条件がないかを確かめておくことが欠かせません。申請期限だけでなく、予算の上限に達して受付が終了する可能性にも注意が必要ですし、工事業者との間で申請の手順や役割分担を確認しておくことも大切です。補助金があるからといって、工事をすれば必ず受け取れるとは限りませんのでご注意ください。

また、補助金を前提に工事を急がないことも重要です。補助額が大きく見えても、必要のない工事まで行えば、結果として無駄な支出が増えてしまうことがあります。工事費用や期待できる効果、住まいの状態を確認したうえで判断するようにしてください。

なお、改善の方法は住宅によって異なります。住宅全体の断熱改修、浴室の断熱改修、二重サッシの設置など選択肢はさまざまで、どれが適しているかは住宅の構造や現在の断熱性能、窓や壁の状態、住む方の悩み、予算によって変わってきます。

断熱性を高めることは室温の安定や冷暖房の負荷の軽減につながる可能性がありますが、実際の効果は工事内容や住宅の状況、冷暖房の使い方などに左右されるため、期待できる効果と限界を、工事の前に確認しておきましょう。

私は消費生活アドバイザーとして、また大学院で住まいに関する情報の非対称性を研究してきた者として、消費者と事業者の間にある情報の差を小さくすることを行動指針にしています。その観点から、補助金や広告の情報だけで工事を決めず、自宅の状態と必要な工事を確認していただきたいと考えています。

【断熱リフォームでよくある5つの失敗】
ここでは、断熱リフォームを検討する際に起こりやすい失敗を5つご紹介します。

1つ目は、窓だけ改修すれば十分だと考えてしまうケースです。窓の性能が改善しても、壁や床、天井などから熱が出入りし、期待した効果が得られない場合がありますので、住まい全体の熱の出入りを確認したうえで、優先順位を決めることが大切です。

2つ目は、先ほども触れましたが、補助金の額だけで工事を決めてしまうケースです。補助対象外の工事だったり、申請条件を満たしていなかったりする可能性があるため、契約前に対象工事と申請手順、自己負担額を確認しておきましょう。

3つ目は、断熱工事をしたのに、期待したほど光熱費が下がらなかったというケースです。実際の効果は工事範囲や住宅の性能、気象条件、冷暖房の設定や使い方によって変わります。工事前に効果の試算条件を確認し、示された節約額を保証された数字として受け止めないようにしてください。

4つ目は、浴室だけ暖かくすればよいと考えてしまうケースです。浴室を改修しても、脱衣所や廊下との温度差が残る場合があります。浴室だけでなく、脱衣所や隣り合う空間も含めて対策を考えることをおすすめします。

5つ目は、リフォームのついでに断熱を検討しなかったケースです。内装や設備を改修した後で断熱工事を追加しようとすると、再び解体などが必要になる場合があります。浴室やLDKなどの改修計画を立てる段階で、断熱もあわせて検討しておくと安心です。

【早めに動くメリットと、今日からできる4つのステップ】
早めに準備を始めれば、対象となる補助制度や工事内容を比べ、申請条件を確認する時間を確保できます。早く動いたからといって補助金を受けられるとは限りませんが、工事を決めてから慌てて調べるよりも、落ち着いて判断しやすくなります。

住宅全体を対象にする方法から窓や浴室に絞る方法まで、住まいの状態や予算に応じて工事の範囲を比較できる点や、浴室やLDKの改修とまとめて検討することで工事の重複を避けられる可能性がある点もメリットです。季節が本格化する前に相談や見積もりを進めておけば、暑さや寒さへの対策を計画的に考えられます。

大がかりな工事の前に、今日から始められることもあります。4つのステップに分けてご紹介しますね。

ステップ1は、自宅の暑さと寒さを確認することです。エアコンを使っても暑い部屋はないか、冬に窓際や足元が冷たくないか、浴室や脱衣所が寒くないか、部屋ごとの温度差や窓の結露が気にならないかを書き出してみてください。

ステップ2は、住宅の情報を調べることです。建築時期、断熱材や窓の仕様、過去の断熱改修の有無を確認し、設計図書やリフォーム時の資料が残っていれば集めておきましょう。築年数だけで性能を決めつけないことが大切です。

ステップ3は、費用をかけずにできる対策を実行することです。夏は日射を遮る工夫をし、冬はカーテンなどで窓際の冷えを和らげ、冷暖房を適切に使って暑さや寒さを我慢しすぎないようにします。温湿度計で室温の変化を把握するのも一つの方法です。

ステップ4は、リフォーム会社などに相談することです。その際は、住まいのどこに問題があるのか、どの範囲を工事するのか、どのような効果が期待できるのか、補助金を差し引いた自己負担額はいくらか、補助金の対象条件や申請手順は何かを確認し、複数の選択肢を比較して必要な工事を見極めてください。

【まとめ】
暑さや寒さは冷暖房の使い方だけでなく、住まいの断熱性能にも関係しています。我慢を重ねる前に自宅の状態を知り、必要に応じて補助制度の確認や専門家への相談を始めることが、適切な住まいの見直しにつながると私は考えています。

こんな方はご相談ください
・築年数の古い住宅にお住まいで、夏の暑さや冬の寒さ、光熱費の負担が気になっている方
・浴室やキッチンなどのリフォームを予定しており、断熱もあわせて検討したい方
・リフォーム会社の提案や補助金の情報について、中立的な立場からセカンドオピニオンを聞きたい方

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菊池浩史

住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

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