平成29年1月 雇用保険法の改正
働き方改革の一環で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(短時間・有期雇用労働者)との不合理な待遇差が禁止となります。これにより、基本給・賞与・手当・福利厚生・教育訓練・安全管理等の全ての待遇について、均等もしくは均衡待遇が求められます。施行日は2020年4月1日(中小企業は、2021年4月1日)からです。
これにより、短時間労働者や有期雇用労働者を雇い入れている事業主は、施行日に向け、対象労働者の確認や待遇の見直し等準備が必要です。
【改正内容】
①不合理な待遇差の禁止
②差別的取扱いの禁止
③福利厚生施設の利用の機会の提供
④待遇の説明義務
⑤実行確保措置の整備
⑥紛争解決手段の整備
【同一労働同一賃金の対象となる労働者】
短時間労働者及び有期雇用労働者が対象(取組対象者労働者)となります。
●短時間労働者
労働契約期間の有期・無期に関わらず、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(期間の定めのないフルタイム労働者)と比べ短い労働者。いわゆる、パートやアルバイトの方等を指します。
*「短時間正社員」は取組対象労働者に該当しません。
●有期雇用労働者
期間の定めのある労働契約を締結している労働者のことです。
①不合理な待遇差の禁止
通常の労働者(正規型の労働者および無期雇用フルタイム労働者)と短時間・有期雇用労働者の間において、「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」「その他の事情」のうち、当該待遇の性質及び待遇を行う目的に照らし、不合理と認められる相違を設けてはなりません。
「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が、同一と判断された場合は待遇について同じ取扱(均等待遇)が必要となり、そうでない場合は「職務の内容」「職務の内容・配置の変更の範囲」に加え「その他の事情」を考慮し不合理な待遇差をなくすこと(均衡待遇)が必要です。
●職務の内容
職務の内容とは、「業務の内容」と「責任の程度」のことです。
職務の内容が同じかどうかは次の(ア)~(ウ)の手順で判断します。
(ア)職種を比較
(例:販売職・事務職・営業職)
(イ)従事している業務の中核的業務の比較
中核的業務とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核的なものを指し、与えられた職務に不可欠な業務・業務の成果が事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務・労働者の職務全体に占める時間(頻度)の割合が大きい業務といった基準に従って総合的に判断します。(何が中核的業務に当たるかは、同じ職種でも個々の事業所ごとに異なります。)
(ウ)責任の程度の比較
与えられている権限の範囲、業務の成果について求められている役割、トラブル発生時の臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマなどの成果への期待度などを総合的に判断します。
(ア)~(ウ)が実質的に同じ場合は、「職務の内容」は同じとなります。
●職務の内容・配置の変更の範囲
(エ)転勤の有無の比較
(オ)転勤の範囲を比較
(カ)職務内容・配置の変更の有無を比較(例:事務職から営業職への変更や一般社員から主任への昇進等)
(キ)職務内容・配置の変更の範囲を比較
(エ)~(キ)が実質的に同じ場合は「職務の内容・配置の変更の範囲」は同じとなります。
②差別的取扱いの禁止
短時間・有期雇用労働者であることを理由に、基本給・賞与その他の待遇について差別的取り扱いをしてはいけません。
③福利厚生施設
給食施設・休憩室・更衣室については、通常の労働者に利用の機会を与えている場合は、短時間・有期雇用労働者にも利用の機会を与える必要があります。
また、その他の福利厚生施設の利用については、定員の関係等で労働者全員が施設を利用できないような場合、増築等までは求めないが、通常の労働者と同じ利用規定を適用したり、利用時間帯に幅を設けたりすること等により、すべての短時間・有期雇用労働者に対しても通常の労働者と同様に利用する権利が確保される措置が求められます。
④待遇の説明義務
●雇入れ後速やかに待遇の説明義務
本人の待遇の内容、待遇の決定に際しての考慮事項について説明が義務となります。労働時間や賃金・手当の内容・教育訓練・福利厚生施設について説明しましょう。
●説明の求めがあった場合
通常の労働者との待遇差の内容・理由等について説明する必要があります。説明方法は、資料を活用し口頭で説明することが基本ですが、書面を交付しておく方が良いでしょう。厚生労働省の『不合理な待遇差解消のための検討・点検マニュアル』に「説明書モデル様式」があります。なお、説明を求めた労働者について不利益な取扱いをしてはいけません。
⑤実行確保措置の整備
違反があった場合、厚生労働大臣による、報告聴取、助言、指導、勧告及び企業名公表といった処分を受ける恐れがあります。
⑥紛争解決手段の整備
パートタイム・有期雇用労働法において、行政ADR(事業主と労働者間の紛争を裁判をせずに解決する手続きのこと)を無料・非公開で利用できます。
【派遣労働者】
派遣労働者の同一労働同一賃金は、「労働者派遣法」に規定されており、2020年4月1日より施行となります。施行日以降は派遣先・派遣元の企業規模に関わらず、派遣労働者の待遇については「派遣先均等・均衡方式」もしくは「労使協定方式」をとる必要があります。
対象となる派遣労働者は、有期・無期を問わず労働者派遣の形態で就業する派遣労働者はすべてが対象です。
大企業および派遣事業を行っている会社は施行日まで残り半年を切りました。施行日までに必要な準備を進めていきましょう。有期契約労働者等の待遇改善を行う場合に利用できる助成金もあります。
(2019年10月末現在)