損害賠償を請求できる?

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:労務トラブル

従業員の不用意なSNS投稿が炎上し、企業が大きな損害を受けるケースが相次いでいます。
信用の失墜による顧客離れ、謝罪広告の掲載、休業、廃業に追い込まれるケースもあり、数千万、数億円単位の損害に膨れ上がることも珍しくありません。大手外食チェーンのアルバイト店員が不衛生な悪ふざけ動画を投稿した事件では株価が暴落し、数十億円の損失とも報道されています。
会社は従業員にこれらの損害賠償を請求することはできるのでしょうか。

<一部しか認められない>
結論から言うと、損害すべてを賠償してもらうことは難しいでしょう。損害賠償を請求したとしても一部しか認められない可能性が高いのです。
なぜなら使用者は、労働者が働くことによって利益を得ているため、そこから生じるリスクも負担すべきと考えられているからです。
どれくらい損害賠償を減額するかは、労働者の過失の程度、地位、職責、労働条件、そして使用者の予防策、保険などの損失分散策などから判断されます。
まれに満額が認められたものもありますが、それは従業員が故意に会社に損害を与えた場合、具体的には会社のお金を横領した場合などよほど悪質なケースに限られています。
故意ではなく過失によって損害を与えた場合は、損害賠償請求は一部しか認められません。SNSの場合、悪ふざけがエスカレートしたものや、投稿すべきではないものをうっかり投稿してしまったというケースが多いため「過失」と判断され、一部しか認められない可能性が高いでしょう。

<一部とはどのくらい>
「一部」とはどれくらいかはケースバイケースですが、一例をご紹介しましょう。
過去に、そば屋の従業員が不衛生な悪ふざけをSNSに投稿して騒ぎになり、店が営業停止に追い込まれるという事件がありました。店はその後破産宣告を受けています。
店側は投稿にかかわった従業員4人に対して1385万円の損害賠償請求をしましたが、その結果得られたのは合計200万円程度の和解金です。

<事前の防止策が重要>
このように多大な被害を受けてもごく一部しか損害賠償が認められないことを考えると、事後の対処よりも事前の防止策に力を入れるべきことがおわかりいただけるでしょう。
事例を交えたわかりやすいルールを作って配布・掲示する、朝礼や研修で繰り返し教育するといった地道な防止策が何より重要なのです。

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

鈴木圭史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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