残業前の休憩時間は必要?
法定労働時間は休憩時間を除き原則、1日8時間・週40時間と決まっており、その労働時間を超えた場合、割増賃金が発生します。
しかし、一定の業種には特例措置が残されており、法定労働時間が1日8時間・週44時間となり、44時間を超えたところから割増賃金が発生します(1日8時間を超えた場合、割増賃金が発生する点は同じ)。
*満18歳未満の年少者には、この特例は適用されません。(週40時間以内の労働のみ可能)
<特例事業>
・商業(卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、不動産管理業、出版業(印刷部門を除く)その他商業)
・映画、演劇業(映画の映写、演劇、その他興行の事業)*映画の製作の事業を除く
・保健衛生業(病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業)
・接客娯楽業(旅館、飲食店、ゴルフ場、遊園地、その他の接客娯楽業)
大きく分けると上記の4業種で、「常時10人未満」の労働者を使用する場合が特例の対象となります。(企業全体ではなく、事業場の規模でみる)
ただし、具体的な業種は細かく決められているので注意が必要です。例えば、商業であれば不動産管理業は特例の対象となりますが、不動産仲介業は特例とはなりません。その他にも、接客娯楽業ではフィットネスクラブ、保健衛生業であれば歯科技工所などが特例の対象となりません。
(「日本標準産業分類」の4桁の番号と「労働基準局報告例規基準業種分類表」の業種分類を確認することで、特例の対象かどうか確認することができます。)
<複数の業務を営んでいる場合>
不動産管理業と不動産仲介業のように、特例の対象業とそうでない業を一緒に運営している場合は、過去1年間を振り返り、どちらが主たる業務だったかで判断します。具体的には、売上の比率・従事する従業員の数によって、判断することになっています。
<変形労働時間制>
「1か月単位の変形労働時間制」及び「フレックスタイム制」は、週40時間のところを週44時間に読み替えて計算します。
*「1年単位の変形労働時間制」「1週間単位の否定形的変形労働時間制」を採用する場合は、週44時間制を利用できる特例事業場であっても、1週間平均40時間以内で設計する必要があります。
<手続き>
特例措置対象事業場に該当する旨の「届出や許可申請は不要」です。
ただし、変形労働時間制を採用する場合は、必要な手続き(就業規則への定めや労使協定の届出)をとる必要があります。
また、途中で労働者が増加し、特例事業から外れた場合は(労働者が9人から10に増えた等)、週40時間を超えたところから割増賃金発生となります。何日までに適用といった規定はないので、次の給与計算期間から適用とすると事務手続きがスムーズでしょう。
また逆に、労働者数が減少し途中から特例事業に該当となった場合は、44時間の適用が可能となります。その場合は、労働者とのトラブルを避けるためにも事前に説明をしておいた方がよいでしょう。