高年齢雇用継続基本給付について
育児休業中の従業員に対して、仕事の手伝いを依頼する場合、一歩間違えると本人がもらえるはずであった育児休業給付が打ち切られる場合があるので注意が必要です。
<育児休業給付とは>
育児休業は、労働者の申出により、原則「1歳まで」取得でき、保育所に入れない場合等の事情がある場合「1歳6か月」まで延長、さらに(保育所に入れない場合等の事情がある場合)再申請により「最大2歳まで」延長できます。
育児休業の申出は、「その期間労務提供義務を消滅させる制度」であるため、恒常的・定期的に就労する場合には、育児・介護休業法上の育児休業をしていることなりません。
しかし、従業員に事情を説明し、本人の意思や待遇等を話し合ったうえで、子を養育する必要がない期間について、「一時的・臨時的」に働いてもらうことができます。
<育児休業給付の支給要件>
①育児休業期間中の1か月ごとに、休業開始前の1か月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
②就業している日数が支給単位期間*ごとに10日以下であること(10日を超える場合は、80時間以下であること)。また、支給単位期間に育児休業終了日が含まれる場合は、就業している日数が10日以下(10日を超える場合は、80時間以下)で、かつ、休業日が1日以上あること
*支給単位期間とは、育児休業を開始した日から起算した1か月ごとの期間のこと
この支給要件から、「80時間以内であれば働いても問題ない」という誤った認識がささやかれるようになりました。例え、支給単位期間に80時間以下の労働であっても恒常的・定期的に就労する場合は、育児休業をしていることにならないため、育児休業給付が支給されないので注意が必要です。
<受給中の就労について>
その就労が一時的・臨時的であって、就労後は元の育児休業に戻ることが明らかであれば要件を満たした場合、育児休業給付の支給対象となります。
〇該当するケース(テレワークを含む)
・大災害が発生し、臨時的な災害対応
・突発的に発生した事態(トラブル等)に対応に、他のものでは対応できない臨時業務を行うため等
ただし、本人の同意を得る必要があります。
〇認められないケース
・あらかじめ決められた特定の曜日や時間に勤務する場合等
<育児休業の支給額>
〇原則
支給額=休業開始賃金日額(*1)×支給日額(*2)×給付率(67% or 50%(*3))
*1 原則、育児休業開始前6か月間の賃金を180で除した額
*2 原則30日、休業終了日の属する支給単位期間についてはその支給単位期間の日数
*3 育児休業開始から6か月経過後は50%、それまでは67%
〇支払われた賃金がある場合
・賃金が賃金月額(休業開始賃金日額×支給日額)の13%(*4)を超えて80%未満の場合
→減額支給となる。(「賃金月額×80%」と賃金の差額が支給)
*4 給付率が50%の場合は30%となる
・賃金が賃金月額の80%以上の場合
→支給されない
【例】賃金月額が30万円(給付率67%)の場合
①支給単位期間に賃金が支払われていない場合
30万円×67%=20万1千円 が支給される
②支給単位期間に賃金6万円が支払われた場合
6万÷30万円=20%→13%を超えているので減額となる
30万円×80%-6万円=18万円 が支給される
③支給単位期間に賃金24万円が支払われた場合
24万÷30万円=80%→不支給
<他社等で副業がある場合>
育児休業給付制度では、副業(雇用保険にないっていない会社)で働いた場合の就業日数・時間も含む必要があります。
そのため、他社でアルバイトをしているような場合は、従業員の方に就業日数・時間を申告してもらわなければなりません。もし、副業が一支給単位期間に10日を超えかつ80時間を超えている場合は、育児休業給付金は不支給となります。(副業先での賃金は算定に含みません)
<その他影響>
育児休業中に妊娠し、引き続き第2子の育児休業に入る場合にも次のような影響がある場合があります。
育児休業給付は、休業開始前の2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あれば受給資格の認定を受けることができます。
よって、第1子の育児休業中に、1か月の支給単位期間に10日を超えて働いたことがある場合、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月として休業開始時賃金の算定に含まれ、第2子に係る育児休業給付金の支給額が少なくなる可能性があります。
(2018年12月末時点)