社会保険労務士が取り扱うべき法律2
事業主の方は、職場における労働者の健康保持のため、健康診断の実施義務があり、違反すると50万円以下の罰金となります。労働者の作業場所、作業時間により、必要な健康診断が異なります。
<対象となる常時使用する労働者>
・正社員
・契約社員等(期間の定めがあるもので1年以上使用されることが予定されている労働者)
・パートやアルバイト(社員の1週間の所定労働時間数の4分の3以上働いている者)
健康診断の種類は大きく4種類に分けられます。
・一般健康診断
・特殊健康診断
・歯科医師による健康診断
・臨時の健康診断
①一般健康診断
・「雇入れ時健康診断」
対象者:常時使用する労働者
労働者を雇い入れるときに必要な健康診断で、検査項目の省略はできません。
・「定期健康診断」
対象者:常時使用する労働者
1年以内ごとに1度定期的に実施が必要な健康診断です。項目は雇入れ時健康診断のものと基本的に同じですが、医師の判断により一定項目については省略が可能な点、喀痰検査が加わる点が異なります。
・「特定業務従事者健康診断」
対象者:労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者
高熱・寒冷な場所における業務、有害放射線にさらされる業務、深夜業を含む業務等、一定の有害業務に従事する労働者に対し、配置替えの際や6か月以内ごとに1回定期健康診断の検査項目について健康診断を行わなければなりません。
・「海外派遣労働者健康診断」
対象者:海外に6か月以上派遣する労働者
派遣前後に健康診断を実施することが義務づけられています。(海外派遣中の規定はありません)
・「給食従業員の検便」
対象者:事業に付随する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者
雇入れの際又は、配置替えの際に検便による健康診断を行わなければならない。実施回数は職場によって異なります。
・「自発的健康診断」 労働者が自発的に受けるもの
対象者: 6か月に24回以上、深夜業(午後10時~午前5時までの間における業務)に従事した労働者
労働者が自発的健康診断(結果は健康診断を受けた日から3か月以内に事業主に提出)を受けた場合、特定業務従事者の健康診断(年2回)の1回分を受けたものとみなすことができる。事業主による費用の負担は任意です。
(特定業務従事者の定期健康診断における、深夜業は1週間に1回以上又は1か月に4回以上行う業務)
②特殊健康診断
対象者:有害な業務に常時従事する労働者
原則雇入れ時、配置替えの際及び6か月以内ごとに1回実施義務があります。
業務によって検査項目は変わります。有害な業務は鉛業務・屋内作業場における有機溶剤業務・潜水業務等です。
(じん肺健康診断)
対象者:常時粉じん作業に従事する労働者
就業時(以前にじん肺作業に常時したことがない者や1年以内のじん肺検診で所見なしの者等は対象外)・管轄区分に応じて1~3年以内ごとに1回・離職時に健康診断を実施しなければならず、じん肺の所見があると診断された場合には、労働局に診断結果とエックス線の写真を提出する必要があります。
③歯科医師による健康診断
塩酸、硝酸、亜硫酸等、歯又は支持組織に有害なガスや粉じん等を発散する場所における業務に従事する労働者に対し、雇入れ・当該業務への配置換え・6か月以内ごとに1回定期に歯科医師による健康診断を行わなければならない。
事業主には、健康診断の実施義務がりますが、労働者にも健康診断を受けることが義務となっています。健康診断の受診に必要な時間を与えているにもかかわらず労働者が従わない場合は業務命令違反として懲戒処分を検討することができます。
対象労働者を把握し、健康診断を実施・結果の通知を行いましょう。また診断の結果に基づき、医師又は歯科医(産業医がいる場合は産業医)の意見を聞き、就業場所の変更や、作業の転換等、適切な措置を講じることが大切です。
労働者に健康障害が現れた場合、健康診断の実施・労働者への結果の通知等を怠っていれば労務トラブルの原因となり、不利になることがあります。
(平成30年4月現在の情報に基づいたコラムとなります。)