平成29年1月 雇用保険法の改正
平成27年9月法改正により、特定労働者派遣事業(届出制)・一般派遣労働者派遣業(許可制)の区分が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制に一本化されることになりました。そこで、現在特定労働者派遣業を行っている事業主は平成30年9月29日までに切り替えを行う必要があります。
①一般派遣と特定派遣の違い
「一般派遣」と「特定派遣」の大きな違いは派遣元との雇用形態です。
「一般派遣」は、派遣先への派遣が決まった時点で労働者と派遣元で雇用契約を結び、派遣先との契約が終了した場合、派遣元は雇用安定措置を講じる必要があります。一方「特定派遣」は、派遣元が労働者を正社員として雇用するので、派遣先での契約が終了しても派遣元との契約はなくならず、派遣期限の制限も無制限でした。法改正により、一般派遣と特定派遣の区別がなくなり、契約社員の派遣期間の上限が3年になり、許可申請を行わない場合、派遣業を行うことができなくなります。
②新たに課せられる内容
・「派遣期間」契約社員の派遣期間は最長3年が限度
派遣先の同一の事業所に派遣できる期間は3年が限度となります。同一事業所とは、場所が独立していること、業務の指導監督・労働の様態が独立性を有する等で判断されます。3年経過後に労働者を違う課に派遣、もしくは違う労働者を同一事業所に派遣することは可能です。ただし、その場合は、期間制限の1か月前までに派遣先の労働組合等から意見を聞く必要があります。(60歳以上の派遣労働者や無期雇用されている労働者等は期間制限の対象外)
・「雇用安定措置」
派遣元は同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある労働者に対して、派遣先への直接雇用の依頼、直接雇用に至らなかった場合は新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用など、派遣終了後も雇用を継続させる措置を講じる義務があります。
・「キャリアアップ措置の実施」 相談窓口を設置する必要がある
派遣就業に必要な技能や知識を習得することができるよう教育訓練を実施する義務や、労働者のキャリアアップを図るため、希望する派遣社員にキャリア・コンサルティングを実施する義務があります。
・「均等待遇」 配慮義務と説明義務
派遣労働者と派遣先で同じ業務を行う労働者の待遇を均等に図るため、同じような業務を行っている労働者の賃金水準や派遣労働者の成果・意欲等の配慮、教育訓練・福利厚生均等の配慮も求められ、本人から考慮した内容の説明を求められた場合は説明をしなければならない。
・「派遣元管理台帳に記載する事項」
今までの記載事項に、無期雇用労働者か有期雇用労働者か、雇用安定措置といて講じた内容・日付・結果、教育訓練を行った日時及び内容の記載等が追加されました。
③派遣業を行うための条件
・事業主(すべての役員・監査役)が欠格事由に該当しないこと
欠格事由とは、労働基準法や職業安定法など雇用保険法などに関する法律の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を受けることのなくなった日から5年を経過していないこと。
・「専ら派遣」でないこと
専ら派遣とは、派遣労働者を特定の企業にのみ派遣すること。
・「事業所要件」を満たしている
広さがおおむね20㎡以上あること。また、研修や面談を行うスペースがある、キャリアアップの相談窓口等設置している。
・「資産要件」を満たしている
1事業所当たり基準資産額(資産―負債)が2000万円以上あること、その基準資産額が負債の総額の7分の1以上であること、現金・預金の額が1事業所あたり15000万円以上であること。(常時雇用している労働者の人数によっては配慮措置が設けられています)
・「派遣元責任者」、「職務代行者」の選任
派遣元責任者は、3年以上の雇用管理経験と派遣元責任者講習の受講(3年毎に受講義務)した者でなければならない。職務代行者は、派遣元責任者がやむを得ず業務を行えない時に代行する者(雇用管理経験や派遣元責任者の受講は必要ではありません)。
④許可申請の流れ
条件を満たしていることが必須。
労働者派遣事業の許可申請書類の作成・提出→ 実地調査 → 許可通知書が交付
特定労働者派遣事業の「廃止届」「事業報告書等」の提出は当該廃止の日の翌日から起算して10日以内に事業主管轄労働局へ提出
現在経過措置対象の特定労働者派遣事業を行われている方は平成30年9月29日までに申請を行う必要があります。期限間際に申告し、許可要件をみたしていない事項等が見つかると、許可を得るまでに空白期間が生じてしまい、派遣事業を行えなくなります。まだ届出を行われていない方は、許可制への切り替えを急いでください。
当事務所代表は、派遣元責任者講習の講師をしており、派遣業界に詳しい事務所になります。許可申請の書類作成から実地調査まで手厚く対応いたします。お気軽にお問い合わせください。