派遣元責任者講習の費用と流れについて
平成27年9月30日の労働者派遣法の改正によって、特定労働者派遣事業がなくなり、すべての労働者派遣事業が許可制になったことから、労働者派遣事業者は、派遣元責任者講習を必ず受講しなければなりません。
派遣元責任者講習は、どのような内容なのでしょうか。この記事では、派遣元責任者講習の内容や職務のほか、派遣元責任者に課せられた要件などについてお話しします。
労働者派遣事業者は、派遣元責任者を選任し、配置する必要がある
労働者派遣法第36条において、「労働者派遣事業者は、適切な雇用管理により派遣労働者の保護等を図るため、派遣元責任者を選任し、配置しなければならない」と定められています。
派遣元責任者は、以下で説明するすべての要件を満たす必要があります。
要件は
「未成年者でなく、労働者派遣法6条の第1号から第12号に定める欠格事由に該当しないこと」
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則29条で定める要件、手続きに従って派遣元責任者の選任がなされていること」
「住所及び居所が一定しない等生活の根拠が不安定でないこと」
「適正な雇用管理を行ううえで支障のない健康状態であること」
「不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのないこと」
「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行う恐れがないこと」
「派遣元責任者となり得る者の名義を借用して、許可を得ようとしていないこと」
「一定の雇用管理等の経験等があること」
「派遣元責任者講習を受講して3年以内であること」
「外国人にあって、一定の在留資格があること」
上記のように、全部で10にも及びます。
派遣元責任者講習は全国で行われている
なかでも最も満たすのが難しい要件が「一定の雇用管理等の経験等があること」です。
「一定の雇用管理等の経験等」とはあいまいな表現ですが、具体的に言えば、企業において3年以上の人事または労務の経験を有していることや、支店長などの管理監督の地位に就いていたことなどが求められます。
職業安定行政や民営職業紹介事業、労働者供給事業に3年以上経験を有する者も該当します。
派遣元責任者は、労働者派遣事業に伴う重要な職務を担当しています。
その職務は、
「派遣労働者に対する就業条件などの明示」
「派遣元管理台帳の作成や記録および保存」
「派遣労働者に対する必要な助言及び指導の実施」
「派遣労働者から申し出を受けた際の苦情処理」
「派遣先との連絡調整」
「派遣労働者の個人情報管理」
「派遣労働者に対し適切な教育訓練やキャリア・コンサルティングの機会を提供すること」「安全衛生管理」
など、多岐にわたります。
労働者派遣事業者は、派遣元責任者がいなければ事業を行うことができません。派遣元責任者は、一定の講習を受けることによって取得することが可能です。派遣元責任者の受講証明書は、労働者派遣事業の許可申請や更新手続きを行う際に不可欠な書類でもあります。なお、受講証明書は、講習会終了後に即日交付されます。
派遣元責任者講習は、東京都や愛知県、大阪府などの大都市圏を中心に、全国各地で行われています。近くの講習機関に開催日時をたずねてみるとよいでしょう。
講習は1日にわたって行われ、労働者派遣法や労働基準法の内容のほか、労働者派遣事業運営の状況や派遣元責任者の職務上の留意点、個人情報保護の取り扱いの注意点、公正な採用選考の方法などについて学びます。
すべての労働者派遣事業者に必須となった派遣元責任者講習
派遣元責任者講習は、厚生労働省が指定した機関で受講することができます。対象となる機関は、株式会社のほか、一般社団法人や公益社団法人など、さまざまです。講座の料金も独自に設定されているので、時間が許す限り検討するとよいでしょう。
受講する際に注意したいのが、法改正に迅速に対応している機関であるかどうか。労働者派遣法をはじめ、労働法は生活に根ざした法律であるため、頻繁に法改正が行われています。対応しているケースがほとんどですが、心配であれば問い合わせてみましょう。
これまで、派遣元責任者講習は、特定労働者派遣事業のみを行っている事業者であれば、受講する必要がありませんでした。
ところが、平成27年9月30日に行われた法改正によって、特定労働者派遣事業がなくなり、すべての労働者派遣事業者が許可制になったことから、派遣元責任者講習は事実上、必須のものとなりました。
このため、平成30年9月29日までに派遣元責任者講習を受講する必要があります。新たに許可申請を行う労働者派遣事業者は、事前に準備をしたうえで、早めに派遣元責任者講習を受講したほうがよいでしょう。派遣元責任者講習は、一度受講すれば終わりではありません。3年ごとに更新する必要があることをしっかりと覚えておいてください。