残業前の休憩時間は必要?

鈴木圭史

鈴木圭史

テーマ:労働基準法関連

 定時の終業時刻の後、残業を始める前に15分や30分の休憩時間を設けている会社があります。法律上、残業をさせるときは休憩を与えなければならないという決まりがあるのでしょうか?
●『60分与えればいい』
 労働基準法では、労働時間に応じて休憩時間を定めているだけですが、労働時間が8時間を超える場合は60分以上の休憩を与えるというのが最長で、労働時間が10時間になろうと12時間になろうと、それ以上休憩を与えなければならないという決まりはありません。
 ですから、昼休みなどすでに60分以上の休憩を与えているのであれば、残業前や残業途中に休憩を与える義務はないのです。
 ただ、終業時刻の後、いったん休憩時間をはさんで区切ることによって、帰る人と残業する人を明確に分けたいといった事情や、続けて働くのは疲れるだろうし、夕食も取りたいだろうといった配慮から残業前や残業途中に休憩時間を設定している会社もあるようです。
●『昼休みが45分の場合は?』
 一方、例えば所定労働時間が7時間30分など8時間未満の職場で、昼休みを45分しか与えていないため、残業をする場合にはあと15分休憩を与えないと違法になってしまうケースもあります。残業をすることで労働時間が8時間を超えてしまうからです。
 昼休憩を1時間にして就業時間を15分遅くするなど、見直しを検討してもよいかもしれません。
●『残業前休暇は制度化すべき?』
 2~3時間残業をするつもりであれば、残業を始める前に先に軽く夕食をとるための休憩時間があるとありがたいですが、あと少しだけ仕事を片付けて早く帰りたいと思っている社員にとっては、残業前の休憩は邪魔に感じられるでしょう。
 残業前の休憩は制度化することはできますが、早く仕事を終わらせて帰りたい社員は休憩をとらずに仕事をするかもしれません。会社側がそれを黙認していれば、その時間の賃金を支払う必要が出てきます。
 なお、昨今、長時間労働の削減が求められています。2から3時間の残業など長時間労働を前提とした制度は改めていくべきなのでしょう。

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鈴木圭史
専門家

鈴木圭史(特定社会保険労務士)

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

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