社長、その想い遺言書だけでは伝わりません

上原輝夫

上原輝夫

テーマ:遺言書で社長人生の総仕上げ

「遺言書を作れば事業承継の準備は安心でしょ?」家族経営の社長さんから、このようなご相談をいただくことがあります。もちろん、遺言書はとても大切です。

誰に財産を残すのか。誰に自社株を引き継ぐのか。家族が相続で争わないようにするためにも、遺言書は重要な役割を果たします。

しかし、家族経営の親子承継に携わるコンサルタント行政書士としてお伝えしたいことがあります。
それは、「遺言書だけでは社長の想いは伝わらない」ということです。なぜなら、遺言書で伝えられるのは主に財産の分け方だからです。

しかし、社長が本当に残したいものは、お金や不動産だけではないはずです。創業当時の苦労、お客様への感謝、社員への想い、家族への感謝、そして後継者への期待。そうした大切な思いは、財産分与の文章だけではなかなか伝わりません。


公正分割協議

お金の分け方だけでは承継は成功しない

相続対策というと、
・不動産を誰に渡すか
・預金をどう分けるか
・自社株を誰が相続するか
といった話が中心になりがちです。確かに重要なことです。

しかし、事業承継は財産承継とは少し違います。例えば、会社を長男に引継ぐと決めたとします。
遺言書に「会社の株式を長男に相続させる」と書けば、それで手続きは進むでしょう。ところが、その理由や背景が何も伝わっていなければ、他の家族はどう感じるでしょうか。
「なぜ長男だけなのか」
「父は本当はどう考えていたのか」
「私たちには何も残したくなかったのか」
そんな誤解が生まれることがあります。

相続でもめる原因は、お金の額だけではありません。思いが伝わっていないことが争いの原因になることもあるのです。

経営理念

創業の想いを残していますか?

多くの社長さんは、会社をゼロから育ててきました。創業当時は資金も人脈もなく、
・昼も夜も働いた
・家族に苦労をかけた
・取引先を一軒一軒回った
・何度も経営危機を乗り越えた
という経験があるはずです。
しかし、その話を後継者や家族に十分に伝えている社長さんは意外と少ないです。

会社の数字や売上は見れば分かります。
しかし、
「なぜこの会社を作ったのか」
「何を大切にしてきたのか」
は社長本人しか語れません。
会社の歴史は、決算書には載らないのです。
だからこそ、創業の想いを言葉にして残すことが大切です。


家族へのメッセージが争いを防ぐ

遺言書を書くとき、財産の分け方には真剣に考える社長さんが多くいます。
一方で、家族への感謝の言葉を残す方は多くはありません。しかし、私はこれが非常に重要だと考えています。
例えば、
「長年支えてくれた妻へ」
「会社を継がなくても応援してくれた子どもたちへ」
「苦しい時代を一緒に乗り越えてくれた家族へ」
こうした感謝の言葉があるだけで、受け取る側の気持ちは大きく変わります。
人は財産だけでなく、気持ちも受け取ります。社長の言葉が残っていることで、家族の理解や納得につながることが殆どです。

シニア承継

後継者への期待を言葉で伝える

後継者には特に伝えておきたいことがあるのではないでしょうか。
例えば、
・社員を大切にしてほしい
・お客様との信頼を守ってほしい
・利益だけを追い求めないでほしい
・地域のために会社を続けてほしい
こうした思いは契約書では伝えられません。
社長の口から直接聞いた言葉や、文章として残された言葉だからこそ後継者の心に残ります。

私が支援した事業承継の中でも、「父の言葉が支えになった」という話を後継者から聞くことがあります。経営者には迷う時があります。そんな時、先代の思いが残されていることは大きな力になると思います。

遺言相談

付言事項や経営理念の継承も大切

遺言書には、財産の分け方以外に自分の思いを記載する方法があります。
それが「付言事項」です。
難しく考える必要はありません。
家族への感謝や後継者への期待を書き残すメッセージです。
また、会社経営で大切にしてきた考え方や理念をまとめておくことも大切です。

例えば、
・お客様第一
・約束を守る
・地域への貢献
・社員の幸せを大切にする
こうした価値観こそが会社の財産です。お金や不動産は引継げても、理念は意識して伝えなければ残りません。だからこそ、事業承継では財産の承継と同じくらい「思いの承継」が重要なのです。


付言事項


まとめ

遺言書は大切です。しかし、事業承継の成功は財産の分け方だけで決まるものではありません。
本当に引き継ぐべきものは、
・ 創業の想い
・ 家族への感謝
・ 後継者への期待
・ 経営者としての価値観
・ 会社の理念
お金や不動産は手続きで引継げます。
しかし、社長の人生そのものは手続きだけでは伝わりません。
だからこそ遺言書を書くときは「誰に何を渡すか」だけではなく、
「何を伝えて残したいか」についても、是非考えてみてください。

その言葉こそが、社長が築上げた会社と家族を次の世代へつなぐ、何より大切な財産になると思います。

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上原輝夫(経営・生き方・終活カウンセラー/行政書士)

行政書士ヒューマンサポートオフィス

資格と前職での経験、これまでの実績を最大限に活かし、「会社と家族の相談相手」として、経営・メンタルケア・終活を応援、サポートします。お客さまにとって何でも話せる気軽で身近な相談相手を目指しています。

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