社長、遺言書を書く前に家族が知らない財産は「争族」の始まり

上原輝夫

上原輝夫

テーマ:遺言書で社長人生の総仕上げ

「うちの家族は多分相続でもめることはない」事業承継や相続のご相談を受けていると、多くの社長さんがおっしゃいます。実際、ご家族が仲良く暮らしているケースはたくさんあります。しかし、相続が始まった途端に関係が悪くなってしまうご家庭も少なくありません。

私は家族経営のコンサルタント行政書士として、数多くのご相談を受けてきましたが、相続トラブルの原因は「家族仲」よりも、むしろ財産が見えていないことにあると感じています。

特に経営者の場合、会社経営に集中するあまり、ご自身の財産がどこにどれだけあるのかを家族へ伝えていないことがあります。そして、その「知られていない財産」が、相続発生後に思わぬ争いを生むのです。

今回は、遺言書を書く前にぜひ確認していただきたい、「財産の見える化」の重要性についてお話ししたいと思います。


やるべきこと

家族は社長さんの財産のすべてを本当に把握していますか?

社長さんは日々、会社のお金や資産を管理しています。次のような財産について、ご家族はどこまで把握しているでしょうか。
・銀行口座はいくつあるのか
・保険に加入しているのか
・どこに不動産を持っているのか
・株式や投資商品を持っているのか
・個人で借入があるのか
・会社への貸付金はあるのか
社長ご本人にとっては当たり前の情報でも、ご家族にとっては全く知らない内容であることが少なくありません。

特に昔から事業を続けている会社では、
「長年使っていない口座」
「相続したままになっている土地」
「昔加入した保険」
などが残っていることもあります。
相続が発生すると、残されたご家族はそれらを一つひとつ調べなければなりません。その作業だけでも大きな負担になるのです。


預金・不動産・保険・借入の見える化が重要

相続対策というと、多くの方が遺言書や節税をイメージします。もちろん大切なことです。
しかし、その前に必要なのが財産の見える化です。まず整理しておきたいのは次の4つです。

・預金
どこの銀行に口座があるのか。
使っていない口座はないか。
法人の口座と個人の口座が混在していないか。

・不動産
自宅だけでなく、
工場用地
駐車場
賃貸物件
相続した土地
なども確認しましょう。

・保険
加入している保険の内容や受取人を整理しておくことが大切です。

・借入金
財産というとプラスの資産ばかり考えがちですが、借入も相続に影響します。
個人の借入や保証人になっている契約なども確認しておく必要があります。
相続では「財産がいくらあるか」だけでなく、「負債がどれだけあるか」も重要なのです。

情報共有

家族が全体像を知らないと不信感が生まれる

相続で本当に怖いのは、財産の金額ではありません。情報不足です。例えば、相続手続きの途中で新しい口座が見つかった場合。あるいは後になって知らなかった土地が見つかった場合。
すると家族の中で....
「なぜ今まで知らされていなかったのか」
「他にも隠している財産があるのではないか」
という疑いが生まれることがあります。本来は誰も悪気がないにもかかわらず、情報不足が原因で不信感が広がってしまうのです。そして、その不信感が家族間の対立へ発展することがあります。

仲の良い兄弟姉妹でも、お金や相続が絡むと感情的になることがあります。だからこそ、元気なうちに財産の全体像を共有しておくことが大切なのです。


財産目録を作るだけでトラブルは大きく減る

そこでおすすめしたいのが、「財産目録」の作成です。難しい書類ではありません。簡単にいうと、自分の財産を一覧表にまとめたものです。

例えば...
・預金口座
・不動産
・保険
・株式
・車
・借入
・保証契約
などを書き出しておきます。完璧である必要はありません。まずは全体像を整理することが目的です。財産目録があれば、ご家族は何を確認すればよいか分かります。

相続手続きもスムーズになりますし、余計な疑いや誤解を防ぐことができます。遺言書と財産目録をセットで準備している社長さんほど、円満な事業承継につながる傾向があります。


秘密


「秘密」が争いを生む

社長さんの中には、
「家族に心配をかけたくない」
「まだ元気だから話す必要はない」
という理由で財産の内容を伝えていない方もいます。

お気持ちはよく分かります。しかし、相続の現場では「知らなかったこと」が争いの原因になるケースが非常に多いのです。秘密があると、残された家族は想像で判断するしかありません

すると...
「隠し財産があるのではないか」
「不公平な相続になっているのではないか」
「自分だけ知らされていなかったのではないか」
という疑問が生まれます。
つまり、争いを生むのは「財産そのもの」ではなく、「財産をめぐる情報」の不足です。


まとめ

遺言書は大切な相続対策です。しかし、その前に行っていただきたいのが財産の見える化です。
・ 預金を整理する
・ 不動産を整理する
・ 保険を整理する
・ 借入を整理する
・ 財産目録を作成する
・ 家族に全体像を伝える
これらの準備をしておくだけで、将来のトラブルを大きく減らすことができます。
家族が争う原因は、財産が多いからではありません。
「何があるのか分からない」という不安こそが争族の始まりなのです。

社長が築いてきた財産と会社を円満に次世代へ引き継ぐためにも、遺言書を書く前に、先ずは財産の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。それがご家族にとって何よりの思いやりになる筈です。





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上原輝夫(経営・生き方・終活カウンセラー/行政書士)

行政書士ヒューマンサポートオフィス

資格と前職での経験、これまでの実績を最大限に活かし、「会社と家族の相談相手」として、経営・メンタルケア・終活を応援、サポートします。お客さまにとって何でも話せる気軽で身近な相談相手を目指しています。

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