親子承継:先代は守り重視
「そろそろ遺言書を作っておこうかな」家族経営の社長さんから、そんな相談を受けることが多々あります。相続対策や事業承継対策として遺言書を準備すること自体は、とても大切なことです。
そんな時に、私はこう伝えています。「社長、その遺言書、ちょっと待ってください」なぜなら、多くの場合、遺言書は対策のスタート地点ではなく、ゴール地点だからです。
目次
遺言書は最後の手続きであって最初の対策ではない
親子承継の相談の現場では、残念ながら「遺言書さえ作れば安心」と考えてしまっている経営者が殆どです。
しかしながら、遺言書はあくまで財産の承継方法を文書化する手続きです。言い換えれば、承継方針が固まった後に作るべきものです。
承継の方向性が定まっていない段階で遺言書を作ると、後から方針変更が必要になったり、かえって家族間の対立を招いたりすることがあります。
例えるなら、家の設計図がないまま内装工事を始めるようなものです。
どれだけ立派な遺言書でも、その前提となる承継戦略が整理されていなければ、本来の効果は発揮できません。
財産の分け方だけ考えても問題は解決しない
。
遺言書の話になると、多くの方が「誰に何を相続させるか」ばかりに意識が向きます。もちろん、それは重要です。しかし、家族経営において本当に難しいのは財産の分配ではなく、会社の継続と家族の関係維持です。
例えば、
・長男が会社を継ぐ
・長女は会社に関与していない
・配偶者が株式を多く保有している
というケースのを考えてみると....
単純に財産を平等に分けた結果、会社の株式まで分散してしまうと、後継者が経営判断を進めにくくなることがあります。反対に、後継者へ株式を集中させれば、他の相続人から「不公平だ」と感じられる可能性もあります。
つまり、相続財産の分け方だけでは問題は解決しません。
会社の未来、家族の感情、後継者の経営権、この3つを同時に考えなければならないのです。
先ずはは会社・家族・後継者の現状整理から始める
事業承継で本当に最初に行うべきことは、遺言書の作成ではありません。
先ず取組むべきは、現状整理です。
具体的には次の3つです。
①会社の現状整理
・会社の株主構成はどうなっているか。
・自社株の評価額はいくらか。
・借入金や個人保証はどうなっているか。
・経営上の課題は何か。
まず会社の姿を正確に把握することが必要です。
②家族の現状整理
・相続人は誰か。
・家族関係に不安要素はないか。
・会社への関与状況はどうか。
・それぞれの価値観や希望は何か。
承継は法律だけでなく感情の問題でもあります。家族の思いを無視した承継は、後々大きなトラブルにつながります。
③後継者の現状整理
・本当に後継者は決まっているのか。
・経営能力や経験は十分か。
・社内外から信頼を得ているか。
・本人に覚悟はあるか。
「長男だから」「他にいないから」という理由だけで決めた後継者では、承継後に会社が苦境に立たされることもあります。
遺言書の前にやるべきことがある
私はこれまで多くの家族経営の会社や個人事業所とをサポートしてきましたが、問題が起きる時にはある共通点があります。
それは、遺言書という“書類”に安心してしまい、本質的な対話を後回しにしていることです。
本当に必要なのは、
「会社を誰に託すのか」
「家族はそれを理解しているのか」
「後継者は経営できるのか」
「家族全員が納得できる形は何か」
を考え抜くことです。
その議論を重ねた結果として、最後に遺言書があります。順番を間違えてはいけません。
遺言書は事業承継のスタートラインではなくゴールテープ
遺言書は事業承継のスタートラインではなく、ゴールテープです。だからこそ私は声を大にして言ってきました。そしてこれからも、言い続けていくと思います。
「社長、その遺言書ちょっと待ってください」
先ずは会社を見つめ、家族を見つめ、後継者を見つめてください。
財産の分け方を決める前に、承継のあり方を決めてください。
そして、その答えが見つかったとき、遺言書は初めて本当の価値を持つようになります。
事業承継で守るべきものは財産だけではありません。
会社の未来、家族の絆、そして創業者が築いてきた想いです。
遺言書は、その想いを完成させるための「最後の一筆であり、社長人生の総仕上げです」決して、「最初の一歩」ではありません。
当事務所は家族経営専門で「親子承継」のサポートを行っております。社長の遺言書や財産分与、今後の会社や個人事業のことで、何か聞いてみたいことや実際に困ったことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。
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