知財を活かす地元企業(3)
令和の時代に入り、残り10日ほどで最初の年末を迎えます。今年は、新たな時代で頑張っておられる知財を活かした地元企業の皆様を、既に7社ほどご紹介させて頂きました。
ご紹介したい企業はまだまだあるのですが、今回で一旦休ませて頂き、次の機会に、また、ご紹介したいと思います。
今回は、既存の企業が、異分野の事業を新規に立ち上げる、いわば社内ベンチャー的なケースをご紹介します。
ご紹介する会社は、「株式会社やすらぎあん」です。同社の看板「やすらぎあん」(登録商標第5501374号)は、北信地域の国道などを走っていて結構目につくため、ご存じの方も多いのではと思います。
また、同社は、以前のコラム〔「特許」等の知的財産権は「コスト」ではなく「投資」という見方〕の中で、特許を活用している会社として一度ご紹介させて頂きました。
このときは、震度7の地震にも耐える「墓の補強構造」に関する特許権(特許第3886477号)を取得し、墓石工事における技術力の強みと他社との差別化をアピールする活用事例としてご紹介させて頂きました。
一方、同社は、長年の墓石事業から得た情報やノウハウなどに基づき、新たな葬儀事業に進出しました。
通常、葬儀を行う場合、葬儀会場を決め、その葬儀会場に檀家としてお世話になっているお寺のご住職さんをお呼びするのが一般的かと思います。
しかし、同社の葬儀方式は、お寺の中で直接葬儀を行う方式です。このため、その場の雰囲気や費用などの面において、一般的な方式よりも、より優位になることは容易に想像できます。
他方、この葬儀方式について、知的財産の視点から見た場合、葬儀方式の名称「お寺でおみおくり」は、商標権(登録第6034046号)として成立しています。 また、この葬儀方式を展開するに当たり、一般社団法人日本寺葬協会を設立しています。そして、「日本寺葬協会」の協会名も、商標権(登録第6044536号)として登録しています。
商標権は、事業を防衛するための強い権利です。他人は、この「日本寺葬協会」をはじめ上述した各商標(名称)に関しては同一のみならず類似する名称も原則使用することはできません。
新規事業を立ち上げた場合、商標権が無ければ、事業の途中からその名称を真似た他人の類似事業や名称が出現することも少なくありません。折角事業を広く展開しようと頑張っても、他社に横取りされてしまうことにもなりかねません。このように、新規事業の展開において、商標権の存在は経営にとっても重要な位置付けになります。
さて、今年は、台風19号の通過など大変な年になりました。一日も早い復興を願いつつ、皆様にはよい年をお迎え下さいますようお祈り申し上げます。