脳の手術の結果、左足に麻痺が残ってしまった御婦人

小黒健二

小黒健二

テーマ:足と靴

「病院で靴や装具を作ってもらったけど、使っていないのよ・・・。」と話す70代の御婦人。
「なぜ使っていないのですか?」とお尋ねすると、
「足やつま先が痛くなるから・・・。」と御婦人。
「でも、それは病院へ行って申告すれば何度でも再調整してくれるでしょ?」と私。
「だって、遠いから行くのが面倒だし、それに何度か調整してもらったけど、うまくいかなかったから・・・。」と御婦人。
「そうですか・・・。」と私。
「お宅は家からも近いし、気軽に行ける距離だから文句も言いやすいでしょ・・・。」と御婦人。
「まあ、何かあったら直ぐに対処ができる便利さはありますよねえ・・・。」と苦笑いする私。

この御婦人は左足に弛緩性の麻痺が残っています。
歩行時に左足のつま先が垂れ下がり、足首が外に傾いて靴底が体の内側を向いてしまいます。
しかし、左足に体重の負荷が掛かって体を支持するにつれ、足首は体の内側に捩れて土踏まずを潰し、親指の付け根に負担を掛けて外反母趾になっています。
左足の親指から第4指までが外反しています。
しかも、指先が麻痺のために屈曲したままで、ほとんど動かせません。

早速、ロッカーソールの健康靴にサポートを組み込んだテストシューズを仕立てました。が・・・、
「あらあ、やっぱりそんな靴になっちゃうの?」と御婦人。
「ええ、今の足の状態をしっかりとサポートして、歩行が安定し、楽に歩けるようにするのが目的の靴ですから・・・。」と私。
「病院で作ったのも、そんな感じのごっつい靴だったのよ・・・。そんな靴しかないの・・・?」と御婦人。
「麻痺があって体を支える筋力が発揮できない左足をサポートするには、体重の負荷を安定して支えるだけの堅牢な靴でないとね・・・。」と私。
「嫌だわねえ・・・。そんな靴なら履きたくないわ。」と御婦人。
「しかし、今履いているような市販の靴だと、つま先が引っ掛かるし、足先が痛くなって歩けないと言われたじゃありませんか・・・。」と私。
「それは、そうだけど・・・。ここは病院じゃなくて靴屋さんでしょ。だったらもう少しデザインも考えてくれなくちゃ・・・。」と御婦人。
「困ったなあ・・・。機能を考えたベストな健康靴なのに・・・。とにかく一度履いて歩いてみて下さいな・・・。」と私。
半ば強引に靴を履かせて歩いて頂きました。

「いかがですか?」と私。
「思ったより軽いわね・・・。」と御婦人。
左足は地面に垂れ下がる事はあっても、ロッカーソールの効用でつま先が地面に引っ掛からずに歩けています。
左足の足首が体重の負荷で捩れる度合いも格段に抑えられています。
「確かに歩き易いわね・・・。早く歩けるし・・・。これなら疲れない感じね・・・。」と御婦人。
「ごっつい靴ではありますけども、歩き易さや快適度は抜群でしょ。」と私。
「これでデザインがもうちょっと良ければねえ・・・。」と御婦人。
「うーん、機能的なデザインを評価して貰いたいなあ・・・。」と私。
御婦人がテストシューズに慣れてきたところで、ご自分の履いてきた市販のウォーキングシューズに履き替えて歩いていただきました。
「あれ?、こんな靴だったっけ・・・。これじゃ全然歩けないわ・・・。」と御婦人。
「でしょ? やっぱり快適に歩ける事が一番じゃないですか?」と私。
「そうね・・・。分かったわ・・・。じゃあ御主人のお勧めの靴にしようかしら・・・。」と御婦人。

こうして、40分後には出来上がったばかりの健康靴を履いてお帰りになる御婦人をお見送りしたのでした。
 
「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/

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小黒健二
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小黒健二(シューフィッター)

有限会社ロビンフット

足のトラブルの原因は様々ですが、病気や事故が原因でなければ、多くの場合が生活習慣による足の筋力の低下によるものです。「足のカウンセリング」は、生活習慣の見直しと運動による自己管理もアドバイスします。

小黒健二プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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