膝の痛みを助長する靴と外反母趾や扁平足を助長する靴
「あのー、ちょっとお伺いしたいのですが・・・」と入ってこられた御婦人。
「はい、何でしょうか?」と私。
「実は私、サンダルを履くと、バックベルトが落ちてくるので困っているんですが・・・。」
「そうなんですか。今履いてるサンダルですか?。」と私。
靴を見てみると、かなりの外反母趾であるにもかかわらず、つま先の細いパンチング(穴あき)タイプのバックベルトサンダルを履いていらっしゃいます。
「ああ、カカトの部分がサンダルの台よりもずれて、ずいぶん空いていますね。バックベルトが調節できないタイプだから、足が靴の前の方にずれ込むとベルトがひっかからなくなるんですね。」と私。
「どうしたらいいんでしょうか?」と御婦人。
「サンダルのつま先の方に半敷きを入れてサイズ調整をするしかないですね。」と私。
「このサンダルはすでに中敷きを入れてるんですけど・・・。」と御婦人。
「ええっ?そうなんですか?」と私。
サンダルを調べてみると、もうすでに、つま先の方に半敷きが2枚も入っていました。
「あれれ、もうすでにサイズ調整してあるんですね。」と確認する私。
「これ以上中敷きを入れると幅がきつくなって足が痛くなるし・・・。」と御婦人。
「確かに・・・。では、根本的な問題を指摘してもいいですか?」と私。
「えっ?何ですか?」と御婦人。
「そもそも靴の幅とサイズが合っていないんですよ。外反母趾で足の横幅が広くなっているのに、つま先の細いスリムなデザインを選ばれていますので、足幅で合わせて足よりも大きめのサイズをお求めになったんだと思います。
ところが、履いているうちに靴の幅が伸びてきて、幅の余裕ができたことから、元々サイズが大きめの靴だったので、幅で止まっていた足先が靴先に突っ込んでいくわけです。そして、バックベルトがカカトに引っ掛からなくなってずり落ちる。
しかし、バックベルトは調整が効かないタイプなので、足を元の位置に戻すには靴幅を狭くしなくてはなりません。そこで、つま先に半敷きを入れるわけです。しかし、また靴幅が伸びてしまって、足が前に突っ込んでいく。ベルトが落ちてくる。という繰り返しをする訳です。」と説明する私。
「どうしたらいいんですか?」と御婦人。
「やはり、足に合った靴を選択するしかないと思いますよ。」と私。
ダメもとで、健康靴のサンダルを履いていただくことにしました。
「ちょっとこのサンダルを履いてみて下さい。」と私。
「いかがですか?。横幅が調整できるから足に合ったサイズが履けるでしょ。足首のベルトで足が前に突っ込まないから歩きやすいでしょ?」と私。
「確かに歩き易いけど、デザインが・・・。これ、サイズはいくつですか?」と御婦人。
「22、5cmです。」と私。
「ええっ?そんなに小さいの・・・?。私、23、5cmのはずですけど・・・。」と御婦人。
「いいえ、足の実寸は22、5cm以下のはずですよ。計測しましょうか?」と私。
御婦人の足の長さを計測すると右足22、2cm。左足22、4cmでした。
「結局、足の幅が合わない靴を大きなサイズで補っていたんですよ。だから靴の幅が伸びてくると大きなサイズを選んだことのデメリットが表れてくるんです。」と私。
「でも、幅が痛いのは嫌だし、みっともないデザインの靴も嫌だし・・・。」と御婦人。
「スリムなデザインが素敵な靴で、足に合ったデザインはみっともない靴だと思い込んでいると、いつまでも矛盾を抱えたまま悩むことになるんですがね・・・。」と私。
「ふーっ、分かりました。どうもありがとう。」と御婦人。
バックベルトをカカトの下に敷いて、ミュールのようになったサンダルを突っ掛けて、お帰りになりました。
「足と靴の相談室」ロビンフット長津田 http://www.robinfoot.co.jp/