前略 墓の中から 第1章を書いてみて
有能な銀行員として生きてきたナオキにもいよいよ人生最期の時がやってきた。
気が付けば2男2女の4人の子に恵まれ、それぞれも独立してさほど問題もなく今このとき。
ただ気がかりはみなナオキの家のお墓とは離れたところに暮らしていること。
いくつもの相続問題も銀行員時代に見てきたナオキにとっては誰にそのお墓を継がせるかが最期の時まで決めかねていた。
普通で言えば長男に頼みたいところだが、その長男は外資系金融マンとして世界を飛び回り定住の地がない。
お墓参りということにもまるで無頓着な子だったので、継承者として頼むことができるのだろうか?
遺言を書ける体力もあまりない。
相続でもめることもないかもしれない。
ただ今まで仕事をする中で見てきた中で些細なことでも兄弟間に遺恨が残ることもある。
そんなすっきりしない気持ちのままナオキは息を引き取った。