神と佛。
「さだ子さん もちろんあなたに御礼が言いたかったのよ。
よくもまあ、嫌味もふくめ私のことをずーっと長きにわたって語ってくれたわねって」
「ええ?それってお礼じゃないじゃないですか。どういうことです?この際だから聴きます」
「さっき、お義父さん、それからおじいさんおばあさんは?ってあなた聞いたでしょ?
その辺のはなしなのよ。
実はね、生きている間に人はなくなっって49年たつと成仏するとかほんとかどうかは知らないけど聞いたことがあって、それが原因かと思っていたんだけど、主人はねまだ45年だと思うのよ。」
「そうですね。私はお会いしたことはありませんが、主人が小学校にあがるころに亡くなって全然記憶にないって言っていました。」
「さだ子さん。いいところに気が付いたわね。それ『記憶』が大事みたい。現世のひとがその人のこと思い出したり、話したりしていないとこの空間には入れなくなってしまうみたいなの」
「いつごろいなくなってしまったんですか?」
「私がここにきて1年も経たないうちよ。私が嫌で逃げて行ったのかと思ったわ。笑っちゃうけど。」
さだ子は思い出してみた。義母が亡くなったころ、義父のたった一人の兄弟もなくなっていたことを。
「お義母さん。『記憶』から消えてしまうと本当に死んじゃうんですね!
お墓って心にいるかぎり面会できる場所なのかもねもしれませんね。」
「そうなのよ。あなたがずっと恨みつらみを誰かに話してくれたことで、みんなが私を忘れないでいてくれた。それが腹立たしいけどどんなにうれしかったか。
それから、あなたが来てくれたことで、愛する家族がここにまた集まってきてくれるじゃない。
それも楽しみ。
これからは実態のない身体だし軽く受け流していきましょ!
たぶん、私の方がこの空間から先にいなくなっちゃうけどそれまではね!
家族でいてくれてありがとう!
さだ子さん」
第一章 終わり