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1型糖尿病患者の「糖尿病ディストレス」予測モデルの開発―客観的データによる心理支援の可能性―

松田友和

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テーマ:糖尿病

京都医療センターの坂根直樹先生らとの共同研究が、アジア糖尿病学会の国際医学誌「Journal of Diabetes Investigation」に掲載されました。

DOI:https://doi.org/10.1111/jdi.70229

1型糖尿病の治療において、患者さんは24時間途切れることのない自己管理を求められます 。インスリン注射や血糖測定、食事・運動管理といった日々の負担は、時に「糖尿病ディストレス」と呼ばれる強い心理的ストレスを引き起こします 。このストレスは治療意欲の低下や血糖コントロールの悪化に直結するため、国際的なガイドラインでも定期的な評価が推奨されていますが、臨床現場でその兆候を早期に捉えることは容易ではありません 。本稿では、AI技術を用いてこの心理的負担を予測しようとする新しい研究についてご紹介します 。

研究の内容

本研究では、持続血糖モニタリング(CGM)という機器で24時間記録した血糖データと、AI技術の一つである機械学習を組み合わせることで、重度の心理的ストレスを抱えている患者さんを予測するモデルの開発に取り組みました。心理的ストレスの評価には、糖尿病領域で広く使われているPAID(Problem Areas in Diabetes)と呼ばれる20項目のアンケートを使用し、スコアが40点以上の場合を「重度の糖尿病ディストレス」と定義しました。
全国10施設の1型糖尿病患者263名(平均年齢48.9歳、女性62.5%)を対象に解析を行い、10種類の異なる機械学習モデルを比較しました。重度の糖尿病ディストレスの割合は全体の30.9%でした。

研究の結果

人間の脳の神経回路を模倣した「ニューラルネットワーク」モデルが最も高い予測精度を示し、正解率74.4%を達成しました。また、このモデルがどれだけ正確にストレス状態の高い患者さんを見分けられるかを評価したところ、一定の識別能があることが確認されました。
心理的ストレスの予測に最も重要だった因子は「低血糖の頻度と程度」でした。低血糖への恐怖が日常生活における大きな精神的負担となっていることが、データからも裏付けられた結果です。次いで「女性であること」「血糖変動の大きさ」が重要な因子として挙げられました。女性が男性と比べて高い心理的ストレスを報告しやすいという点は、これまでの複数の先行研究とも一致しており、本研究でも統計的に有意な差として確認されました。

今後の課題

今回の研究はまだ始まりの一歩です。より多くの患者さんのデータを用いた検証や、睡眠・身体活動などの生活習慣データとの組み合わせによる精度向上が進むことで、将来的には血糖データを見るだけで心理的なサポートが必要な方にいち早く気づける医療の実現が期待されます。

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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