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糖尿病を持つ人が腫瘍マーカーを測定した時の注意点~CEAとCA19-9の評価について~

松田友和

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テーマ:糖尿病

高血糖でがんと誤解される可能性

人間ドックや健康診断で、CEA(癌胎児性抗原)やCA19-9という腫瘍マーカーが高値と指摘され、不安を感じたことはありませんか。血糖値が高い状態が続くと、がんがなくてもこれらの腫瘍マーカーが偽高値を示すことがあります。糖尿病だから高くなるのではなく、高血糖状態が原因です。
私たちのクリニックでも、実際の診療現場において、血糖値が高い方のCEAやCA19-9が偽高値を示すケースをしばしば経験しています。血糖値のマネージメントが改善されると、これらの腫瘍マーカーも低下していきます。

CEAとCA19-9とは

CEA(癌胎児性抗原)

CEAは消化器系のがん(胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がん)や肺がん、乳がんなどで高値となる腫瘍マーカーです。基準値は5.0ng/mL以下とされています。
CEAは「糖蛋白」という物質です。糖蛋白とは、タンパク質に糖(ブドウ糖など)がくっついた構造を持つ物質のことです。正常な組織にも少量存在しますが、がん細胞では大量に作られます。

CA19-9

CA19-9は膵臓がん、胆道がん、胃がん、大腸がんなどの消化器系がんの診断補助に用いられる腫瘍マーカーです。基準値は37U/mL以下です。膵管、胆管、胃、唾液腺などに存在します。特に膵臓がんでは80~90%で陽性を示すため、重要な検査指標となっています。
CA19-9は「糖鎖抗原」という物質です。糖鎖抗原とは、糖(ブドウ糖など)が鎖のように連なった構造を持つ物質のことです。この糖の鎖の並び方が特徴的であるため、検査で検出できます。

人間ドックでよく測定される腫瘍マーカー

CEAとCA19-9は、人間ドックや健康診断で最も頻繁に測定される腫瘍マーカーの一つです。比較的安価で簡単に測定できるため、広く普及しています。
ただし、がんの早期発見を目的としたスクリーニング検査としては、国が推奨するがん検診には含まれていません。これは、腫瘍マーカーには次のような問題があるためです。

  • 偽陽性:がんがないのに高値を示すことがある
  • 偽陰性:がんがあっても高値を示さないことがある

CEAでは、肺がんがない方でも約25%、大腸がんがない方でも約20~30%で高値を示すと報告されています。

高血糖状態が腫瘍マーカーを偽高値にする理由

糖尿病を持つことではなく高血糖状態が問題

重要なのは、「糖尿病を持っているから」ではなく、「高血糖状態が続いているから」腫瘍マーカーが偽高値になるという点です。血糖値がしっかりマネージメントされている糖尿病を持つ人では、腫瘍マーカーの偽高値は起こりにくくなります。
実際の診療では、高血糖の方でCEAやCA19-9が高値を示していても、血糖値のマネージメントが改善されると、これらの腫瘍マーカーが低下していくことをしばしば経験します。画像検査でがんが見つからず、血糖値の改善とともに腫瘍マーカーも正常化することから、高血糖が原因であったと判断できるケースです。

CEAが偽高値となる仕組み

CEAは「糖蛋白」、つまりタンパク質に糖がくっついた物質です。血糖値が高い状態が続くと、体内のタンパク質に糖がくっつきやすくなります。この現象を「糖化(とうか)」といいます。
糖化されたタンパク質は、性質が変わってしまいます。CEAも糖蛋白であるため、高血糖状態ではCEAに余分な糖がくっつき、検査で高値として検出されやすくなると考えられています。

CA19-9が偽高値となる仕組み

CA19-9は「糖鎖抗原」、つまり糖が鎖のように連なった構造を持つ物質です。
高血糖状態では、膵管や胆管などの細胞からCA19-9が作られる量が増える可能性があります。また、高血糖により細胞の表面にある糖の構造が変化し、CA19-9が増えることも考えられています。さらに、CEAと同様に、糖化の影響で検査での反応性が変わる可能性も指摘されています。

両マーカーの共通点と相違点

共通点

両マーカーとも、高血糖状態という同じ条件で偽高値を示します。どちらも糖化(タンパク質や糖に余分な糖がくっつく現象)の影響を受ける可能性があり、血糖値のマネージメントが改善されると低下する傾向があります。また、両者とも人間ドックや健康診断で測定される頻度が高い腫瘍マーカーです。

相違点

CEAとCA19-9は、その構造が異なります。
CEAは「糖蛋白」です。タンパク質に糖がくっついた構造をしています。高血糖では、このタンパク質部分に余分な糖がくっつきやすくなることが、偽高値の主な原因と考えられています。
一方、CA19-9は「糖鎖抗原」です。糖が鎖のように連なった構造そのものが検査の対象です。高血糖では、この糖の鎖の構造が変化したり、作られる量が増えたりすることが、偽高値の主な原因と考えられています。
また、CA19-9には特殊な性質があります。ルイス式血液型というものに関連しており、日本人の約10%を占める「ルイス抗原陰性」の方では、膵臓がんなどがあってもCA19-9が低値にとどまることが知られています。CEAにはこのような血液型との関連はありません。

偽高値を避けるために大切なこと

高血糖状態による腫瘍マーカーの偽高値を避けるためには、血糖値のマネージメントが重要です。HbA1c値を目標範囲内に維持することで、腫瘍マーカーの偽高値のリスクを減らすことができます。
人間ドックや健康診断で腫瘍マーカーが高値と指摘された場合、まず血糖値やHbA1c値を確認しましょう。高血糖状態であれば、血糖値のマネージメントを改善したあとに再検査することが推奨されます。

腫瘍マーカーが高値と言われたら

腫瘍マーカーが高値だからといって、必ずしもがんがあるわけではありません。CEA、CA19-9ともに、次のような良性の状態でも高値を示すことがあります。

  • 喫煙者
  • 肝硬変
  • 膵炎
  • 胆石症
  • 高齢者

腫瘍マーカーの値だけで診断することはできません。医療機関で、CT、MRI、超音波検査、内視鏡検査などの画像検査を組み合わせた総合的な評価が必要です。

血糖値が高い状態が続いている場合、腫瘍マーカーが偽高値を示している可能性があります。しかし、偽高値の可能性があるからといって、がんがないという証明にはなりません。「高血糖のせいだろう」と決めつけて放置することは避けるべきです。
大切なのは、腫瘍マーカーの値に過度に振り回されることなく、かかりつけ医と相談しながら、適切な精密検査を受けることです。

さいごに

腫瘍マーカーは、がんの診断補助や治療効果の判定、再発の早期発見に有用な検査です。しかし、高血糖状態では偽高値を示す可能性があることを知っておくことが重要です。
糖尿病を持つ人は、血糖値をしっかりマネージメントすることで、腫瘍マーカーの偽高値による不必要な不安や検査を避けることができます。健康診断や人間ドックで腫瘍マーカーが高値と指摘された場合は、慌てずに血糖値の状態を確認し、医療機関で適切な評価を受けましょう。

引用文献

1. 日本臨床検査医学会「腫瘍マーカーの見方」ガイドライン2005/2006
2. 医学書院「CEA,CA19-9と糖尿病」medicina 36巻11号, 1999
3. 国立がん研究センター がん情報サービス「腫瘍マーカー検査とは」2024年
4. 市立旭川病院「CA19-9,CEAが血糖コントロールに並行して変動した2型糖尿病の1症例」

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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