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ビタミンDと糖尿病との関係

松田友和

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テーマ:糖尿病

はじめに

ビタミンDは、古くから骨の健康に重要な栄養素として知られてきましたが、近年の研究により、さまざまな健康効果があることが明らかになってきています。特に、糖尿病との関係について注目が集まっています。

糖尿病とビタミンDの関係

米国の研究では、ビタミンDを十分に摂取していた成人では、糖尿病の発症率が3年間の追跡期間で22.7%であったのに対し、ビタミンD不足の成人では25%でした。ビタミンDの摂取により、糖尿病のリスクは15%減少することが示されました(Ann Intern Med. 2023)。

また、すでに糖尿病と診断されている人に対するビタミンD補給の効果も検討されています。39の臨床研究を解析した結果、ビタミンD補給群では、空腹時血糖値、HbA1c(血糖の平均値)、インスリン抵抗性の指標が有意に改善することが明らかになりました。特に、ビタミンD欠乏症の方や、肥満の方、HbA1cが8%以上の方で、その効果が顕著でした(Diabetes Obes Metab. 2024)。

さらに、日本での研究では、糖尿病予備軍(耐糖能異常)の方に活性型ビタミンDを投与した結果、インスリンの分泌が不足している方で、糖尿病発症の予防効果が認められました(BMJ. 2022)。

他の疾患との関係

ビタミンDは糖尿病以外の疾患にも影響を及ぼすことが報告されています。

1.心血管疾患との関係

国際共同研究では、ビタミンDを補給している高齢者は、摂取していない高齢者に比べ、心血管疾患の発症率が9%低く、特に心筋梗塞の発症率は19%低いことが示されました(BMJ. 2023)。

2.認知症との関係

英米の共同研究では、ビタミンDを摂取していた高齢者は、認知症の診断が最大で40%少ないことが明らかになりました(Alzheimers Dement. 2023)。

3.サルコペニアとの関係

日本の研究により、ビタミンD不足の方は、将来的に筋力低下やサルコペニア(筋肉量の減少)を発症するリスクが上昇することが明らかになりました(J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022)。

4.感染症との関係

日本の研究では、小中学生を対象とした研究で、ビタミンDの投与によりインフルエンザの発症が42%抑制されました(Am J Clin Nutr. 2010)。新型コロナウイルス感染症に関しても、米国の研究で、ビタミンD不足の方は感染のリスクが高く、また重症化しやすいことが報告されています(PLoS One. 2020)。

5.癌との関係

欧米の共同研究によると、ビタミンDを毎日服用することで、がんによる死亡率が12%低下することが報告されています(Ageing Res Rev. 2023)。日本の研究では、一部の消化管がんに対して、ビタミンDサプリメントの連日内服により再発・死亡リスクが73%減少することが示されています(JAMA Netw Open. 2023)。この研究では、p53がん抑制蛋白異常を持つがん患者に限定した結果であり、全てのがん患者に一般化できるわけではありません。

ビタミンDを増やすために

ビタミンDは、日光を浴びることにより体内で作られます。食品では、きのこ類、魚介類(特にサバ、サンマ、イワシなど)、卵類、乳類に多く含まれています。夏なら木陰で30分程度、冬なら1時間程度の日光浴が目安となります。高齢者では、皮膚でのビタミンD産生能力が低下することに加え、屋外での活動量減少により日光照射を受ける機会が減少する場合もあり、食事からの摂取が特に重要になってきます。

外食が多い方や、偏った食事になりがちな方は、ビタミンD不足になりやすいかもしれません。まずは、日光を浴びながらの散歩を日課に取り入れたり、魚介類や乳製品など、ビタミンDを含む食材を意識的に食事に取り入れたりすることから始めてみましょう。サプリメントの使用を検討される場合は、ビタミンDは過剰摂取により腎機能障害や食欲不振、嘔吐などの症状が現れることがありますので、必ず医師に相談してください。食事と運動を楽しみながら、ビタミンDを意識した生活を送ることで、糖尿病をはじめとする様々な病気の予防につながることが期待できます。

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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