脂肪肝と糖尿病の深い関係~健康診断のALT値から分かる隠れたリスク~
はじめに
私たちの体に脂肪が多く溜まりますと 、肝臓にも脂肪が蓄積し「脂肪肝」となることがあります。生活習慣病(糖尿病、肥満、高血圧など)と関連する脂肪肝を「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と呼びます。「脂肪肝」の有病率は9~30%といわれていて、患者数は少なくとも1,000万人以上と推計されています。
脂肪肝のタイプ
最新の研究で、この脂肪肝には少なくとも2つの異なるタイプがあることが分かりました。
肝臓型
1つ目は「肝臓型」で、肝臓の中に脂肪が溜まりやすい体質を持つタイプ です。このタイプは血液中の脂質が比較的低めですが、肝臓の病気が進行しやすい特徴があります。
全身型
2つ目は「全身型」で、体全体の代謝に問題があるタイプです。このタイプは血液中の脂質が高めで、生活習慣病を併発しやすい特徴があります。
この2つのタイプの違いには遺伝的な要因が関係していますが、どちらのタイプでも、適切な生活習慣の改善により、病気の進行を防ぐことができます。
定期的な検査が大切な理由
- 肝機能検査(AST、ALTなど)で肝臓への負担を早期に発見できる
- 血中脂質検査で心臓病などのリスクを評価できる
- これらの検査結果から、どちらのタイプの脂肪肝なのかを推測できる
- タイプに応じて、より注意すべき合併症の予防に力を入れることができる
- 早期発見・早期治療により、深刻な合併症を防ぐことができる
例えば、検査で肝機能の数値が高く、血中脂質が低めの場合は「肝臓型」の可能性があり、肝臓の定期的な画像検査がより重要になるかもしれません。一方、血中脂質が高めの場合は「全身型」の可能性があり、心臓病や腎臓病の予防により注意を払う必要があるかもしれません。
まとめ
生活習慣病をお持ちの方は特に注意が必要ですが、それ以外の方も定期的な健康診断で自分のタイプを知ることで、より効果的な予防が可能になります。例えば、家族に糖尿病や脂肪肝の方がいる場合は、より早期からの予防的な検査が勧められます 。
これまで脂肪肝の治療は、運動や食事療法が中心でしたが、タイプによって進み方や合併症が異なることが分かったため、より個人に合わせた治療法の開発が期待されています。
【参考文献】 Jamialahmadi O, et al. Partitioned polygenic risk scores identify distinct types of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease.
Nature Medicine. 2024;30:3614-3623. DOI: https://doi.org/10.1038/s41591-024-03284-0
※この研究は、スウェーデンのヨーテボリ大学を中心とした国際研究チームによって行われ、2024年12月に医学分野の著名な科学誌「Nature Medicine」に掲載されました。36,394人の大規模な遺伝子解析に基づく研究成果です。



