熱中症と糖尿病の関係
はじめに
健康診断などで異常を指摘 される頻度の高い検査項目の1つに中性脂肪(トリグリセライド)があります。高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)は、糖尿病診療をしていても遭遇することの多い脂質異常症の1つです。高血糖状態で生じている高中性脂肪血症は、高血糖を是正しますと改善します。その一方で、血糖値の改善に伴って、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えてくるケースをよくみかけます。まるで血糖値を改善させることが、脂質に対しては悪い影響をもたらしているように思えます。そこで、今回は中性脂肪と糖尿病との関係について考えてみたいと思います。
中性脂肪の働き
中性脂肪は、体のエネルギー源として重要な脂質です。体内では皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられますが、これが過剰になると肥満になります。食事から摂った脂質は消化され、小腸で吸収され、中性脂肪として再合成されます。肝臓でも糖や脂肪酸から中性脂肪が作られます。
中性脂肪やコレステロールなどの脂質は人が生きていくために欠かせない成分です。そのため、中性脂肪やコレステロールは、食事から摂取したり、肝臓で合成されるわけですが、血液(水)の中を他の臓器や組織に脂質(油)を輸送するためには工夫が必要となります。
この水と油を解決するために、中性脂肪はコレステロールとともに、血中の「リポ蛋白」と呼ばれるタンパク質に載せて 運ばれます。
リポ蛋白は4つのタイプ(カイロミクロン、VLDL、LDL、HDL)があります。
カイロミクロンは主に小腸で作られ、VLDLは肝臓で作られます。血中で、VLDLの中性脂肪が減るとLDLとなります。
LDLはコレステロールを他の臓器に運ぶ役割があります。LDLにより血管壁にコレステロールが運ばれることで動脈硬化の要因となりますので、LDLは悪玉コレステロールとも呼ばれています。
HDLには、過剰となったコレステロールを回収して肝臓に戻す働きがありますので、善玉コレステロールとも呼ばれます。
中性脂肪の値は、血中への供給(食事から摂取する、あるいは脂肪として備蓄する)と代謝(エネルギー源として消費する)によって決まります。供給が多すぎたり代謝が遅れたりすると、高中性脂肪血症という状態になります。
したがって高中性脂肪血症は、食事の取りすぎや様々な代謝異常によって起こります。