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「糖尿病だから痩せましょう」はなぜ間違っているのか

松田友和

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テーマ:糖尿病

糖尿病内科まつだクリニックで外来を担当している野村先生(徳島大学、神戸大学在籍中)や村前先生(現在は糖尿病内科むらまえクリニック)らと糖尿病内科まつだクリニックのスタッフで行った研究成果が米国の医学誌であるJournal of Diabetes and Its Complicationsに掲載されましたのでご報告させていただきます。

Association of Short-term Changes in HbA1c with Body Composition and the Importance of Muscle Maintenance in Patients with Type 2 Diabetes
2型糖尿病を持つ人におけるHbA1cの短期的変化と体組成との関連および筋肉維持の重要性
論文URL

目的

この研究の目的は、糖尿病を持つ人の、血糖の変化と身体組成の関係を調べることでした。

方法

  • 2型糖尿病を持つ380人を対象に生体電気インピーダンス分析(InBodyを用いた体組成検査)を行いました。
  • 血液中のHbA1c値と身体組成の指標を、ベースライン時と6ヵ月後で比較しました。
  • HbA1cと身体組成の変化の関連性を検討するために、多変量解析を行いました。


結果

  • HbA1c値は6ヵ月後に有意に低下しました(P<0.01)。しかし、BMI(体重と身長のバランス)に有意な変化は見られませんでした。
  • 線形重回帰分析の結果、HbA1cの変化は筋肉量の変化(β=-0.18;P=0.047)や骨塩量の変化(β=-0.28;P<0.001)と負の関連があることが示されましたHbA1cの変化と体脂肪率の変化との間には有意な関連は見られませんでした。


結論

  • この研究は、短期間での糖代謝の変化と身体組成の変化との間に部分的に関連があることを示しています。
  • 脂肪率を減らす介入は短期間では糖代謝に影響を与えない可能性がありますが、筋肉量や骨塩量を維持または増加させる介入は糖尿病管理において重要な役割を果たす可能性があります。


この研究結果から得られた気付き

「糖尿病=痩せるべき」ではない

「糖尿病であれば痩せなくてはいけない」「血糖値を下げるためには体重を減らしまし
ょう」といった会話を耳にすることがありますが、今回の研究結果は、これらの内容が
正確ではないことを意味しています。

確かに長期的な視点で考えますと、肥満になり、内臓脂肪が増えると、インスリンの効き目が低下することで、血糖値を上昇させてしまう要因となります。
しかし、今回の結果のように、6カ月という比較的短期間では、血糖値は脂肪の増減より、筋肉量の増減により強い影響を受けることが明らかになりました。

血糖値のためには、「痩せましょう」より、「筋肉を増やしましょう」が、より正確な表現になります。

糖尿病のスティグマ(負の烙印)を減らすために出来ること

2023年に私たちが報告した、糖尿病と恥ずかしさとの関係を調べた論文※では、糖尿病関連の羞恥心を持つ人はBMIが有意に高い傾向にありました。

※Diabetes-related shame among people with type 2 diabetes: an internet-based cross-sectional study 「2型糖尿病患者の糖尿病関連の恥:インターネットベースの横断研究」
論文は下記のURLからご覧になれます
論文URL

血糖値を下げるためには、「痩せる」ことより、「筋肉を増やす」ことの方が、少なくとも短期的には効果があるということが広く認識されるようになれば、糖尿病に対する偏見が少しでも減るのではないかと期待しています。

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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