1型糖尿病とは ~2型糖尿病と何が違うのか(前編)~
はじめに
「糖尿病を持つ人は長生きできない」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、2011年~2020年の10年間で実施された調査により、糖尿病を持つ人の生命予後は糖尿病を持たない人とほとんど変わらなかったという結果が報告されました。
そこで、今回はこの調査結果についてまとめてみたいと思います。
日本糖尿病学会による調査報告
「アンケート調査による日本人糖尿病の死因 ―2011~2020 年の10 年間,68,555 名での検討―」
67_106.pdf (jds.or.jp)
方法
〇調査の対象期間:2011年1月1日から2020年12 月31日の10年間
〇調査の依頼施設
「過去5年間(2016~2020年)に日本糖尿病学会年次学術集会において発表を行った施設」という条件を満たした1,154施設
⇒これらの施設の多くは救急車などを受け入れている急性期の病院であるということには注意が必要です。
〇調査対象
依頼診療科を含めた施設全体での死亡者を対象とし,糖尿病症例に関しては可能な限り全症例を,非糖尿病症例に関しては糖尿病症例と同数程度の症例登録を依頼
〇登録数
208施設(回収率18.0%)から233,176症例(糖尿病症例:68,555名,非糖尿病症例:164,621名)が登録
調査報告のポイント
調査結果を7つのポイントにまとめました。
まずは、3つのポイントを下図に示します。
- 糖尿病症例における死因の上位3つは非糖尿病症例でも同様の分布でした。
- 非糖尿病症例と比較して糖尿病症例において、脳血管障害の比率が有意に低い要因ははっきりとはわかりません。以前より糖尿病があれば、血圧や脂質のマネージメントがより厳格に行われていたことが要因と推測されています。
- 糖尿病を持つ40歳代および50歳代では、血管障害を起こさないように要注意ということを意味しています。具体的には、血糖値のマネージメントや血圧、脂質のマネージメントをしっかりと実践するというになります。
- 糖尿病と膵臓癌との関連を裏付ける結果だと考えられます。また、糖尿病症例では感染症に注意が必要であることが示唆されます。
- 糖尿病診療は日進月歩で進化しています。このような死因の調査が行われるたびに、平均死亡時年齢は上がってきています。
- 糖尿病の有無より、血糖値がマネージメントできているかどうかが大切です。血糖値がしっかりとマネージメントできていれば生命予後の心配をする必要はないと言えるのではないでしょうか。
- 今回の結果では平均死亡時年齢は糖尿病症例で有意に高いという結果でした。これは、今回の調査対象の医療機関の中に、急性期の病院が多数含まれていたことが関係していると考えられています。この報告の中では、このことを考慮しても、平均死亡時年齢が糖尿病症例の方が低いという結果にはならないと述べています。
まとめ
今回の報告から、少なくとも「糖尿病を持つ人が長生きできない」ということはきっぱりと否定できます。大切なことは、糖尿病があるかないかではなく、高い血糖値を放置しないということだと思います。
「糖尿病を持つ人も元気で長生きできる」という事実が常識になる日も近づいています。