指の関節に痛みを持つ方へ ~ばね指~
はじめに
糖尿病診療をしていると、様々な相談を受けます。その1つに手の関節の痛みがあります。
そこで、今回は指の関節の痛みを訴えられる方に多い疾患である「へバーデン結節」を紹介させていただきます。
へバーデン結節
この疾患を発見した英国のへバーデン博士にちなんで、へバーデン結節と名付けられました。
症状
まずは、日本整形外科学会のホームページのイラストをご覧ください。
心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
人差し指から小指の第1関節(指先の関節)が腫れたり、赤くなったり、曲がったりします。まれに、母指(第1指)にみられることもあります。また、痛みが強い場合は、指を握ることが困難になります。
第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったこぶができることがあります。これをミューカスシスト(粘液嚢腫)といいます。(下図参照)
へバーデン結節の特徴
- へバーデン結節は、変性性膝関節症(膝の痛み)や変形性股関節症(股関節の痛み)と同様に、変形性関節症の1つです。
- 高齢になるほどへバーデン結節など変形性関節症の発生率は高くなります。
- 手や手指を頻繁に使用する人に起こりやすいという特徴があります。手をよく使う裁縫や農業をされている方に発症しやすいと言われています。また、患者さんの多くが、いわゆる主婦(死語になってきていますが)であったとの報告もあります。これらは、指先をよく使うことが指の関節の変形をもたらすことを示唆しています。
- 更年期以降の女性に多く発症すると言われています。女性ホルモンが関与しているのではないかとも報告されていますが、真偽は定かではありません。痛みを伴うような症例は女性に多いのですが、変形自体は男性にも同程度生じているという報告もあるようです。
- 原因としては、外傷、甲状腺疾患、糖尿病などに合併して発生する場合があるようです。これらの場合は、若年層に発生する割合が高くなります。
- 関節リウマチとは違います。へバーデン結節は、第1関節(指先)に認めますが、関節
- リウマチによる手関節の変形は、第2関節や手の指の付け根の関節に変形が生じます。
関節リウマチによる手関節の変形(日本整形外科学会のホームページより)
へバーデン結節とは異なり、指の付け根の関節や第2関節に生じることが多い
へバーデン結節の治療や予防
治療に関しても、日本整形外科学会のホームページの内容をご紹介します。
ホームページの内容は以下に示しています。
治療:
保存的療法としては、局所の安静(固定も含む)や投薬、局所のテーピングなどがあります。急性期では少量の関節内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)なども有効です。
保存的療法で痛みが改善しないときや変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は、手術を考慮します。手術法にはコブ結節を切除するものや関節を固定してしまう方法が行われます。
予防:
第1関節が痛むときは安静にしましょう。痛くても使わなくてはならないときは、テーピングがお勧めです。普段でも指先に過度な負担が生じることを避けましょう。
マッサージも有効のようですが、痛みを伴うほど強くマッサージをすることは避けてください。マッサージをする場合は、優しくお願いします。
まとめ
糖尿病診療中にしばしばみられる手の関節の痛みを引き起こす疾患である「へバーデン結節」を紹介しました。へバーデン結節は、膝や股関節の関節症と同じく、加齢や使い過ぎで発症する変形性関節症の1つです。糖尿病との関係も報告されていますが、因果関係は明らかではありません。へバーデン結節の同じように、指の痛みを伴う疾患に、「ばね指」があります。このばね指は、へバーデン結節以上に、糖尿病との関連が示唆されています。
次回は、ばね指と糖尿病の関係を紹介させていただきます。