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糖尿病を持つ人の自己管理とヘルスケアアプリの利用との関連

松田友和

松田友和

テーマ:糖尿病

先日、私たち糖尿病内科まつだクリニックのメンバーと、神戸市看護大学の稲垣先生らとの共同研究の結果が、論文に掲載されましたので、報告させていただきます。
日本語タイトルにあるように、自己管理行動とヘルスケアアプリの利用に関する研究です。

Relationship between Diabetes Self-Management and the Use of Health Care Apps: A Cross-Sectional Study
Satoshi Inagaki , Kenji Kato , Kozue Abe , Hiroaki Takahashi , Tomokazu Matsuda
ACI open 2023; 07(01): e23-e29
DOI: 10.1055/s-0043-1766113

背景

糖尿病を持つ人が、スマートフォンのヘルスケアアプリケーション(アプリ)を使用して健康を管理することが増えています。ただし、ヘルスケアアプリを使用している糖尿病を持つ人の割合とセルフケアとの関係を調べた研究はほとんどありません。

研究の目的

この研究の目的は、糖尿病を持つ人の間でのヘルスケアアプリの普及率と、アプリの使用と自己管理の関係を調べることです。

研究の方法

2型糖尿病を持つ人を対象にオンライン調査を用いて横断研究を行いました。
多重線形回帰分析は、日本語版の糖尿病セルフケア行動尺度(SDSCA)の総得点とSDSCAの運動・食事療法の下位尺度を目的変数として行いました。

研究の結果

○ この研究の253人の糖尿病を持つ人のうち、61人(24.1%)がヘルスケアアプリを使用していました。

○ 60歳以上であっても、20%以上の人がヘルスケアアプリも使用していました。

○ ヘルスケアアプリの使用は、自律的動機付けとともに、身体活動頻度の有意な予測因子でした(p < 0.001)。

○ ヘルスケアアプリを使用した糖尿病を持つ人は、使用しなかった人よりも高い身体活動スコアを示しました。

○ 食事療法に関しては、ヘルスケアアプリの使用は食生活と有意な関連はありませんでした(p = 0.29)。一方で、自律的動機づけは、運動療法と同様に、食生活のスコアと有意に関連していました。

研究から得られた知見

2型糖尿病を持つ人のうち、ヘルスケアアプリを利用している人は24.1%で、ヘルスケアアプリを利用している人では、利用していない人に比べて、運動の自己管理スコアが有意に高いことがわかりました。

研究結果の振り返り

最近は、様々な種類の健康管理アプリが登場しています。私たちの検討では、糖尿病を持つ人の4人に1人が健康管理アプリを利用していることが明らかになりました。
ヘルスケアアプリの利用は、運動習慣の向上に寄与している可能性が示唆されましたが、その一方で、食生活の改善には、有意な貢献は出来ていませんでした。
運動習慣、食習慣ともに、糖尿病を持つ人の自律的動機づけが、良い影響をもたらしていることが明らかになりました。
以上の結果より、ヘルスケアアプリは、活動量を増やすための手段として、有用であると考えられました。その一方で、アプリを使えば、必ずしも自己管理行動が改善するわけではありません。自律的動機づけ(他者からの指示や影響で行動を起こすのではなく、自分のために、あるいは自分で納得して、行動を起こすこと)が大切であることも確認できました。

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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