世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬が血糖値と体重減少にもたらすインパクト ~GIPとGLP-1の糖代謝における作用の違いから考える~
以前の当コラムで、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と血糖値の関係について述べました。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と血糖値との関係
その際にも、「HbA1cと血糖値の関係が崩れる時」があることをご紹介しました。
今回のコラムでは、1型糖尿病患者さんのHbA1cと平均血糖値との間に「ずれ」が発生する要因についての、京都医療センターの坂根先生らとの共同研究の結果を紹介します。
Factors association of hemoglobin glycation index in adults with type 1 diabetes mellitus: the FGM-Japan study
成人1型糖尿病におけるヘモグロビン糖化指数に関連する因子: FGM-Japan試験
(J Diabetes Investig. 2023 Feb 14. doi: 10.1111/jdi.13973.)
目的/はじめに
HbA1cと血糖値の間の不一致(ヘモグロビン糖化指数:HGI)に、関連する因子を見つけることを目的としました。
方法
1型糖尿病の方(211名 , 平均年齢 50.9歳±15.2歳, 女性の性別=59.2%, CGM使用期間=2.1±1.0歳)を対象に横断研究を行いました。
FreeStyle Libreセンサーから得られたデータを使用して、リブレの値から推測したHbA1c (GMI)および血糖変動性(GV)パラメーターを計算しました。
ヘモグロビン糖化指数:HGIは、血液から測定したHbA1c(一般的に使用される検査データ)レベルと、リブレの値から推測したHbA1c(GMI)との差として定義しました。
研究結果
HGIが高くなる(つまり、実測したHbA1cが予想HbA1cより高くなる)のは
・女性である
・実測のHbA1cの値が高い
・血糖の変動率(%CV)が高い
・eGFR(腎機能)が低い
・Hb(ヘモグロビン)が低い
といった条件であることがわかりました。
さらに、HbA1cと性別で調整すると、血糖変動が高いことと腎機能が低いことが、HGIが高くなる(つまり、実測したHbA1cが予想HbA1cより高くなること)ことと関連していました。
結論
この研究は、HGI(実測したHbA1と予想HbA1cのずれ)が、男性より女性で、腎機能が低下することで、血糖変動が大きいことで、高くなることを明らかにしました。
日常に測定している血糖値は、それほど高くないのに、HbA1cが思ったよりも高い数値の場合は、一度主治医に相談されてみてはいかがでしょうか。
今回、ご紹介した内容は、
J Diabetes Investig. 2023 Feb 14.
doi: 10.1111/jdi.13973.
に掲載されています。