論文投稿のお知らせ~糖尿病関連の恥について~
アミノ酸スコアだけでは測れないたんぱく質の質
良質なたんぱく質とは、アミノ酸スコアだけでは語れないこともわかってきています。日本人7万人を対象にして、動物性および植物性たんぱく質摂取量とその後の死亡リスクとの関連を調べたJPHC研究をご紹介します(JAMA Int Med 2019年8月)。
この研究では、食事を摂取したエネルギーに対する植物性たんぱく質の割合が多いほど、死亡全体のリスクの低下がみられました。死因別に検討したところ、植物性たんぱく質の割合が高い人ほど循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡のリスクが低いことが分かりました。(図参照)。
さらに、同じエネルギー摂取量において、総エネルギーに対する3%の赤肉あるいは加工肉からのたんぱく質を、植物性たんぱく質に置き換えた場合のリスクを計算したところ、赤肉を植物性たんぱく質に置き換えた場合は、総死亡リスクが34%、がん死亡リスクが39%、循環器死亡リスクが42%下がることがわかりました。また、加工肉を植物性たんぱく質に置き換えた場合は、総死亡が46%、がん死亡リスクが50%下がることがわかりました。
同じ動物性たんぱく質の中でも、赤肉を魚介類からのたんぱく質で置き換えると、総死亡リスクが25%、がん死亡リスクが33%、循環器死亡リスクが33%下がることもわかりました。つまり、アミノ酸スコアで測れる良質なたんぱく質という考え方だけでは、栄養素(アミノ酸の種類)的には充分であっても、同じ栄養素であれば、動物性たんぱく質より、植物性たんぱく質が、さらに、動物性の中でも、魚介類のたんぱく質がより健康的な良質なたんぱく質と言えるのではないでしょうか。
研究結果はあくまでも研究結果
これらの結果からは、たんぱく質としては、植物性たんぱく質がもっとも良質で、次に魚介類のたんぱく質で、赤肉をはじめとする肉類は最も良くないたんぱく質と言えそうです。これらは、概ねは合っているのではないかと思われますが、必ずしもその通りというわけではありません。次に紹介する研究結果は、摂取するたんぱく質の種類によって、脳卒中の発症率が変わるというものです。研究では、牛肉をはじめとする赤肉を基準に、他のたんぱく質の摂取量の違いで、脳卒中の発症リスクを調べています。
結果を見てみますと、植物性たんぱく質である豆類は赤肉と比べて、脳卒中の発症リスクに変化はありません。同じ植物性たんぱく質でも、ナッツには脳卒中の発症を下げる効果がありそうです。さらに興味深いことに同じ動物性たんぱく質でも、鶏肉には赤肉と比べると強い脳卒中抑制効果がありそうです。
これらのように、研究結果はあくまでも調べた集団の結果であって、全ての研究結果が同じ結論を導きだしているわけではありません。勿論、全く的外れなことを言っているわけではありませんので、充分参考には値すると思います。大事なことは、これらの結果は私たち自身に完全に当てはまるわけではありませんので、私たちはこれらを参考に、私たちの食生活を楽しく組み立てていくことが大切になってきます。
これからも食についての知識を増やしていき、より楽しく、より豊かな食生活を満喫していきましょう。