糖尿病によるインスリン作用低下が筋肉の老化や寿命に及ぼす影響についての研究報告
糖尿病性神経障害への対策
神経障害の原因は、神経を栄養している血管が高血糖により障害されることですから、高血糖を是正することが最大の対策になります。一般的にはHbA1c 7%以上の高血糖が長期間持続すると生じてくると、前述しました。しかし、実は糖尿病予備群程度の高血糖や血糖変動、さらには低血糖でも神経を障害させるということが明らかになってきています。実際に、境界型糖尿病患者において、神経障害を呈している方が一定数いらっしゃることも報告されています。以上より、糖尿病性神経障害への対策としては、血糖を出来るだけ早期からしっかりとマネージメントすることに尽きます。勿論、神経障害を起こし得るその他の疾患である高血圧、脂質異常、肥満、喫煙などのコントコールも重要です。
既に神経障害がある場合に注意すべきこと
長期間高血糖状態であった方が、悩んでいる神経障害を改善させるために一生懸命血糖コントロールに励んだ場合に、むしろ痛みが悪化する場合があります。せっかく血糖値は下がったのに、むしろ日常生活に大きな支障がでるほどの激痛が出現することもあります。これを、「治療後有痛性神経障害」と言います。何故、このような痛みが出現するのはわかっていませんが、長期間高血糖状態にあった方が血糖コントロールを行う際には、焦りすぎないことも大切です。特に血糖コントロール開始時に、痩せ型の方、神経障害がある方は注意が必要だと言われています(糖尿病治療 により増悪した糖尿病性有痛性神経障害の検討."糖尿病性合併症" Vol.3, 糖尿病性合併症研究会編, メヂカジャーナル社, 東京, p72-77 ,1990)。
糖尿病性神経障害の治療
既に神経障害が起こっている状態に対しては、対症療法(症状を緩和させるような治療)しかありません。根本的には血糖値を安定化させることが大切です。今、生じている痛みや痺れに対しては、いくつかの内服薬が症状を緩和するために使用されます。神経の興奮を抑える作用があるものや、中枢神経系に働きかけて作用を発揮するものなど、ある程度の効果が期待できる内服薬も登場しておりますので、お困りの方は主治医にご相談されてみてはいかがでしょうか。