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第5回無為塾「40歳からは、役割を脱いで自分らしく〜思い込みを手放して『無為自然』に人生を楽しむ」ありがとう<後編>

長谷川満

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テーマ:無為塾

心の構造:自我と自己

では皆さん、次にこの資料をご覧ください。



心というのは大きく分けて自我自己に分けられます。

自我というのは自分の考え、信念、価値観で意識できている部分です。
自己というのは意識だけでなく、無意識も含めた心の全体性です。
無意識とは、抑圧した自分、忘れたつもりの自分、自分が知らない自分のことです。

例えて言えば自我は政府、自己は国民です。
国民(自己)が全体であるのに対して、政府(自我)はその一部に過ぎませんが、国の方針を決定しているのは政府(自我)です。

この政府(自我)がずーっと意思決定権を持っていては自己実現は叶いません。なぜなら自己実現とは、今まで抑圧してきた自分も、忘れてきた自分も、今まで知らなかった自分も全部ひっくるめて自分らしく生きることだからです。

それは国民全員(自分の好きな部分も嫌いな部分も)が抑圧されることなく、等しく尊重されることです。

これがなかなか困難なんです。
政府(自我)は、いかに自分を安全に保つか、いかに政権維持(現状維持)するかが至上命題ですから、なかなか今まで通りの考え方、信念、価値観を手放そうとしません。

それは自我が自我を否定することだから当然のことです。
今まで通りの考え方を手放すのは本当に勇気がいることです。

完璧な人間ではなく、自分らしい自分

スイスの心理学者ユングは、自己実現とは完璧な人間になることではなく、自分の弱さやダメなところを受け入れた人間(自分らしい自分)になることだと言っています。

ユングは40歳までの人間の目標は「より良い社会人になること」(社会適応)だと考えました。
そして40歳以降の人間の目標は「自分自身になること」(自己実現)だと考えました。

それに目覚めさせるために40代以降の「中年の危機」が起こるのだとユングは言いました。


「中年の危機」の4つのパターン

中年の危機には4つのパターンがあります。

1.アイデンティティの崩壊

それまで自分を支えていた「役割」が失われることです。

・子どもの不登校で「良い母親」ではなくなってしまった。
・失業して「一家の大黒柱」ではなくなってしまった。
・事業が失敗して「成功者」ではなくなってしまった。
・離婚を突きつけられ「良き夫」ではなくなってしまった。

冬季オリンピック、フィギュアスケートペアで金メダルを取った「りくりゅうペア」の木原龍一選手は、今までずっと三浦璃来選手を支えてきた頼り甲斐のあるお兄ちゃんでした。それが彼のアイデンティティだったんですね。でも今回のオリンピックのショートプログラムでミスが出てしまった。それにショックを受けた木原龍一選手はそれ以降ずーっと泣きっぱなしでフリー当日の公式練習でさえもまだ泣いていたそうです。

公式練習が終わった直後、三浦璃来選手は「大丈夫。まだ終わっていない。私、今日は龍一くんのために滑るね。」と声をかけました。その言葉を聞いた瞬間、木原龍一選手はハッと我に返って「僕も璃来ちゃんのために滑るよ。」と気持ちが完全に前向きに切り替わりました。

ショートプログラムでのミス。りくりゅうペアにとって今回のオリンピックは金メダルを取る最大のチャンスでした。そこで致命的なミスが出てしまった。木原龍一選手の精神は限界を超え、涙が止まらなくなりました。そんな彼を支えたのがパートナーの三浦璃来選手でした。全く今までとは立場が逆転してしまいました。

私はこのことが二人の絆を深めたことはもちろんですが、それ以上に木原龍一選手にとって「三浦璃来選手を支える頼り甲斐のあるお兄ちゃん」というアイデンティティが崩壊して、「頼りない泣き虫のお兄ちゃん」になることにより、自分がいかに三浦璃来選手に支えられ、励まされやってきたかを再確認したことと思います。

自分は必死で支えてきたつもりだったけれど、本当は自分が支えてもらっていたんだ。この認識の転換が起こる。これこそがアイデンティティの崩壊による自己実現への目覚めとなるのです。「頼りない泣き虫のお兄ちゃん」をも統合することにより木原龍一選手はより思いやり深く、そして弱さを受け入れたからこそ「しなやかな強さ」や周りへの感謝の気づきを手に入れられたのではないかと思います。

2.親の死、自らの病気や老い

40代以降は当然のことながら親の死を経験することになります。そこで大きな喪失感に見舞われ鬱になってしまう人もいます。

また自分も仕事や子どものことで鬱になることもあるでしょう。また病気が見つかったりして、それで落ち込むこともあるでしょう。

そのくらいの年齢になると体力的にも容姿的にも老いを感じます。それに抗うようにマラソンや筋トレ、美容やヨガを始めるかもしれません。

「親の死」や「自らの病気や老い」。
これらを意識することにより「自分は死にゆく存在である。自分の人生はこれでいいのだろうか。何かし残したことはないのか。」と自問自答するようになります。

それが自分の新しい可能性の扉を開くこともあります。上に挙げたマラソンや筋トレ、美容やヨガもその可能性の扉になることもあります。

私の京都の友人で40代でひどい鬱になった女性がいました。彼女はその回復の過程でおばあちゃんと行った旅行が楽しかったことを思い出します。また京都の思い出ある色々な場所を訪ねて心を癒していきます。彼女は自身が鬱になったことからカウンセラーの勉強もしました。

そしてそれらの経験は何一つ無駄にはなりませんでした。彼女は京都のプライベート旅専門の旅行社「京都癒しの旅」を起業し、その数年後には京都の旅のエッセイ集「京都癒しの旅」を商業出版しました。今も元気に京都の穴場スポットをプライベート旅で案内しておられます。

一見マイナスに見える問題から、導かれるように自己実現へとつながっていく。それは偶然ではありません。そのために中年の危機があるのですから。

3.人間関係の悩み

人間関係の悩みも40代以降では深刻です。

・職場にどうしても耐え難いストレスになる人がいる。
・同居の姑の面倒は一切見ないと妻に宣言された。
・夫婦関係が冷え切っていて会話がほぼない状態である。
・自分の親や兄弟が許せない。

こうした問題を通じてユングの言う「自分の影(シャドー)」と直面し、それを許し、受け入れることで自己実現の扉が開かれることもあります。

*影(シャドー)とは、自分が抑圧し、生きてこなかった自分の一部分。

4.何かにどハマりしてしまう

40代以降にコントロールできないほどに何かに夢中にのめり込んでしまうということがあります。
それ自体は悪いことではないのですが、体力的にも時間的にも経済的にも過度に負担になるようなら、それはやはり中年の危機と呼ぶべきものです。

それが健全な趣味かどうかについては、月2万円の出費を超えないというのが一つの基準となります。

・ボディビル、美容、健康
・車とかバイクのカスタム、趣味
・推し活、クラブ通い
・宗教、スピリチュアル

これらにどハマりすること自体は悪くありません。むしろ自分の新しい可能性を開いてくれたり、自己実現の扉になることもあるくらいです。しかし、宗教にあり得ない額のお布施をしたり、スピリチュアルな啓発セミナーに高額を注ぎ込んだりすれば、それはやはり問題となります。

ただ、それらの依存から抜け出した後、そうなってしまう自分と真摯に向き合い、自分の弱さや過去の満たされなかった思いを受け入れられるようになれば、それは自己実現へとつながっていきます。

また、それらのどハマりしている趣味を続ける中で、今まで生きてこられなかった自分(抑圧した自分、忘れていた自分)を十分に生きているのなら、それもまた自己実現の一つとして見ていいと思います。

まとめ

40代以降に出会う悩みや問題は、自我の殻を破り自己実現していくために起こるのだ、ということを色々な角度から解説していきました。

40代以降に直面する悩み、例えば子どもの不登校や離婚、親の死や鬱、病気、失業などは自らのアイデンティティを崩壊させる程の危機となり得ます。実際にそれがあまりにも辛いことなのでアルコールに逃げたりする人もいるでしょう。

でも、逃げることなく「立場や面目をなくした自分」を静かに見つめた時、見えてくるものがあります。

一生懸命に努力してきた自分。
成功し自信満々な自分。
思い通りにならず苦しかった自分。
怖くて逃げ出したい自分。
不安を誤魔化してきた自分。

そんな自分を思い返した時、必死で頑張っていたんだなあ、無理していたんだなあ、我慢していたんだなあ、と自分に「もういいんだよ。よく頑張ったね。」と声をかけたくなります。

その時、あなたは初めてありのままの自分を許し、ありのままの自分を受け入れられるようになったのです。
それが自己実現の入り口に立ったということです。

絶望は自己実現の母です。
絶望し、開き直った時、新しい扉が開かれます
もう不自然なことはしなくなります。
不思議と気が楽になります。
気がつけば自分の好きなことを始めています。

おめでとうございます!
あなたが今感じている自由さ。
それが自己実現した気分なのです。

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長谷川満
専門家

長谷川満(講演会講師)

家庭教師システム学院

発達障がいや不登校の子の意欲を引き出すには自己肯定感を高める必要があります。その子のありのままを受容し、信頼関係を築き、成功体験と褒め言葉で自信と意欲を引き出します。

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