「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語（26）“「天保」の年号”北山亮司さん（63歳）
お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」
一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。
全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社）日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品）
「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。
その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。
涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。
マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。
これまでに、以下の18作品をご紹介いたしました。
（1）「祖母との出会い」/三浦るるさん
（2）「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん
（3）「祖父のお墓で」/水野真由美さん
（4）「おはからい」/漣ほたるさん
(5)「星よりも近く」/倉木敬人さん
(6)「泣き虫」/藤田徹朗さん
(7)「田舎のお墓を訪れて」/長坂隆雄さん
(8) 「祖母の墓を抱きしめて」/梅山太郎さん
(9) 「祖母VS母・お墓バトル」/森下純一さん
(10) 「一片の桜」/咲ママさん
（11）「心の掛け橋 」/棚橋すみえさん
（12）「おじいちゃんがくれたもの」/匿名希望さん
（13）「お墓物語」/寺田聡さん
（14）「温かい土」/渡辺笑子さん
（15）「父の死と我が使命」/匿名希望さん
（16）「孫に引かれて歩む道」/今野芳彦さん
（17）「墓石は語る」/伊東静雄さん
（18）「癒しの園」/加納一馬さん
今回は、愛知県在住のももいちごさんの作品、
「家族の縁をつなぐお墓」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。
「家族の縁をつなぐお墓」/ももいちごさん（37歳・愛知県）
昨年八月、母の兄が亡くなりました。
癌があちこちに転移し、手術が出来ない状態でした。
私は実家から離れた隣県に住んでいます。
母から叔父の他界したことを告げられた時、少し悩みました。
「私もお葬式に出席した方が良いのかな…。
でも、最近は交流がなかったし、仕事だし…」
欠勤することがネックで考えましたが、
母の辛そうな声を聞き、参列することに決めました。
早々に仕度をし、電車に飛び乗りました。
電車に揺られながら、「帰るんだな…」と思いました。
仕事や日々の生活に追われ、
実家に帰ることが面倒だと思っていたので、
久しぶりの帰省です。
「電話を受けて、その日に帰省するなんて…。
お葬式や事故の知らせくらいか…」と考えていました。
お葬式の日、私は妹の喪服を借り、
両親、妹夫婦と共に葬儀場へと向かいました。
会場には既に多くの人が集まり、
懐かしい顔もたくさんありました。
入口で、よく遊んでもらった叔母さんに、
私だと気付いてもらえないくらい、
久しぶりの再会だった人もいました。
お葬式ですが、悲しい雰囲気だけではなく、
和やかな空気が、そこには確かにありました。
悲しみを共有しながらも近況を伝え合う頃、
お墓へ向かう時間となりました。
親族で向かい、手を合わせました。
私はふと父に、「どうしてお墓ってあると思う？
仏壇だけじゃなくて？」と聞きました。
父は、「うん、やはり家族が一つのお墓に入れば、
そこに皆が集まるでしょう。
疎遠になっている人とも会うことが出来たり。
そういう役目をしてくれるっていうのが、
お墓だと思うよ」と、言ったのです。
先祖供養の為だけではなく、
その子孫の縁をつなぐ役目をしてくれる…。
そういう視点で「お墓」を考えたことがなかったので、
正に目からウロコでした。
なるほど。
実家と疎遠になりつつあった私も、叔父のお陰で、
こうして家族と時を過ごしていられるのだと実感しました。
家族の縁をつないでくれるお墓を、
大切にしていこうと思っています。
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「お墓物語」は、近畿地方の方限定でお送りさせていただきます。
なお、部数に限りがありますので業者の方のお申し込みはご遠慮ください。
～つづく～
次回は、仁平井清次さん（79歳・東京都）の作品、
「プロポーズはお墓で」をご紹介させていただきます。
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