お墓は要る!要らない?(2)「生と死の尊厳」の回復
(1)近年における葬送の変化
(2)「生と死の尊厳」の回復
(3)『先祖の話』解説講演会開催
(4)『先祖の話』解説講演会①人は死んでも生きている?
(5)『先祖の話』解説講演会②お墓ってなんだろう?
(6)『先祖の話』解説講演会③肉体と魂の行き場所
(7)『先祖の話』解説講演会④ご先祖様を招く方法?
(8)『先祖の話』解説講演会⑤霊は融合合体できる?
(9)『先祖の話』解説講演会⑥天皇家の氏神様がどこの家にもあ
(10)『先祖の話』解説講演会⑦お正月とお盆
(11)『先祖の話』解説講演会⑧氏神様もボディガードを雇う?
〜上記のコラムからの続きです〜
以下は、2014年9月23日(火・祝)に神戸国際会館で行われました、
小畠宏允氏による、『先祖の話』解説講演会の内容を解説したものです。
柳田國男氏の『先祖の話』への想い
柳田國男氏が、この本、『先祖の話』を書いたのは昭和20年3月頃です。
昭和20年(1945年)3月というと、東京大空襲(3月10日)あった頃です。
その戦火のさなか、おそらく防空壕の中などで一気に書き上げたのでしょう。
第二次世界大戦も、この頃になると、見識ある人たちは、
たぶん日本が敗戦するであろうことを薄々知っていました。
柳田國男氏も例外ではなく、日本が戦争に負けることを悟り、
残された日本人のために、この本を書き上げたとも考えられます。
もしも、日本が戦争に負け、アメリカの属国になった時に、
「日本人である」という“絶対的な証明(アイデンティティー)”があれば、
それを糧に、日本は将来必ず再興できるのではないかと考えたのです。
それは、柳田國男氏が長年に渡り民俗学を研究してきた中で、
「日本人はご先祖様を氏神として崇め、ずっと大切にしてきた民族である」
ということを1冊の本にまとめておけば、万一アメリカの属国にとなった時にも、
この本を読んで「自分は日本人である」という誇り高き“絶対的証明”となり、
一致団結して国の再興が出来ると柳田國男氏は密かに考えていたのかも知れません。
そのために、この時期にこの『先祖の話』を書いたのです。
「ご先祖様」は二つの解釈がある
「ご先祖様」という言葉について、昭和20年4月頃には二つの解釈ができています。
一つ目は、「ご先祖様」とは、その家の家系図の筆頭にあげられる人、
つまり、「先つ祖(さきつおや)」であるという学問的な考え方です。
これは、全く新しい考え方で、昔の無学文盲の人たちはこんな解釈はしませんでした。
もちろん、柳田國男氏もこの解釈はしていません。
この新しい「ご先祖様」の解釈は、尋常小学校などで文字を覚えた人たちが、
文字づらでご先祖様の意味を解説したに過ぎないと柳田國男氏は説いています。
もう一つの考え方の「ご先祖様」とは、父や母、お爺ちゃんやお婆ちゃん達が、
日頃から使っている、「ご先祖様へ…」「ご先祖様は…」という言葉を、
意味こそさえ分からないが、小さい子どもの頃から耳でこの言葉を聞き、
使っている人の気持ちをくみ取って「ご先祖様」を理解してきたのです。
「ご先祖様」とはどういう意味かなんて、教える人はいませんし、
もちろん、どの子供たちもこれについて聞くことなどしなかったのです。
この子供たちが大きくなり、文字を覚え読み書きが出来るようになっても、
「ご先祖様」とは、家系図の筆頭である、というような考え方はしませんでした。
「ご先祖様」とは祀るべきものであって、自分たちの家で祀らなければ、
他では祀るべきものではなく、それぞれの家に必ず伴うものと思っていることで、
「ご先祖が誰か!」を明白に言い切った人は、ほどんどいませんでしたが、
その心持ちは、いつでも「ご先祖様」という言葉を使うときに現れているのです。
つまり、「うちのご先祖様は○○△△でね!」なんて、
「ご先祖様」が誰かを特定するようなことは決して言わなかったのです。
おそれ多くも「ご先祖様」を知っている人は、絶対そんなことは言いません。
「ご先祖様のお蔭で助かりました」
「ご先祖様のお蔭で幸せです」
なんて時に、その「ご先祖様」が誰なのかなど、
言うべきことではなく、聞くべきことでもないのです。
「ご先祖様」は理屈ではないのです。
ご先祖様をお祀りする人の気持ちをくみ取ったものが「ご先祖様」なのです。
~つづく~
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