AIの時代、これからの若手社員には「問いを立てる力」を養う新たなOJTの実施を!
前編では、ベテランの暗黙知を組織の資産にするための体系「濱田式AI品質スタンダード」と「匠ナレッジコア」の誕生についてお話ししました。しかし、構想が固まった私を待っていたのは、極めて現実的な壁でした。
「では、どうやってAIにこの考え方を実行させるのか?」
12,000字に宿る「現場の魂」
その壁を越えるため、私は狂ったようにAIとの対話を繰り返し、一つのシステムを作り込んでいきました。それが「AI品質ナビゲータ」です。
中核となるプロンプトは、気がつけば12,000字を超えていました。しかし、私はこの文字数の多さを誇りたいわけではありません。重要なのは、そこに「何が込められているか」です。
品質管理の考え方、問題解決の手順、TAKUMI、KATANA、8つの型……。そこには、私が長年現場で這いつくばって経験してきたことのすべてが組み込まれています。これは単なる「長いプロンプト」ではありません。私が現場で積み重ねてきた考え方を、AIが実行できる形に変換した「知的資産」なのです。
一人社長だからこそ辿り着いた「ライセンス」という答え
このシステムを広めたいと思う一方で、一人社長である私はジレンマを抱えていました。
企業支援、セミナー、執筆、システムの改良……やりたいことは山ほどあるのに、一人では抱えきれない。「自分がもっと頑張ればいい」という根性論は、もはや通用しませんでした。
そこで至ったのが、「自分にしかできないことだけをやる」という決断です。
私の役割は、新しい考え方を生み出し、現場で検証し、AI品質ナビゲータを進化させること。それなら、企業の重要なナレッジを私の会社で一括管理する必要はありません。
「企業のナレッジは企業自身が管理し、その環境の中にAI品質ナビゲータをライセンスとして提供する」
毎月の維持管理費をいただき、契約期間中の利用権を提供する。これは単なるプロンプトの売り切りではありません。「完成したAIを売る」のではなく、「進化し続けるAI」を届けるモデルです。企業は機密情報を外部に出す必要がなく、私は全社のデータベースを管理する重圧から解放される。まさに、一人社長である私にとって完璧なピースがはまった瞬間でした。
目指すのは「AIサービス会社」ではない
ここまで走り抜けてきて、私が本当に作りたいものが明確になりました。
私は、単純なAIサービス会社を作りたいわけでも、便利なツールを売り捌きたいわけでもありません。
日本の製造現場に眠っている「匠の知恵」を、次の世代につなぐ仕組みを作りたい。
若い人が「聞きづらい」という理由だけで失敗するのを防ぎたい。「昔からこうしている」という思考停止を打ち破り、「なぜそうするのか」のKnow-Whyを全員が使えるようにしたいのです。
2026年は、私にとって「第一章」に過ぎません。
「AIを品質管理に使えないか?」という一つの問いから始まった物語は、今ようやく「考え方」から「仕組み」へと変わり始めました。
これから現場で使ってもらい、失敗し、改善し、また新たな知識を得ていく。
「熟練の暗黙知を、全員が使える武器に」
この言葉を、決して単なるキャッチコピーでは終わらせません。匠の知恵を、会社の資産へ。私の新しい挑戦は、まだ始まったばかりです。


