マイクロソフトのAI、Copilotは自治体で採用されている3つの理由とは?
濱田式AI品質スタンダードにおける人の必要なスキルは何か。
特別なITスキルは要りません。必要なのは『現場を知っていること』と、次の五つの考え方・基本操作だけです。
①プロンプト設計:AIへの指示の出し方、役割・前提・形式を伝える基本。
②逆質問の発想:『なぜ・もし・何点』で判断根拠を引き出す問い方。
③構造化の目:語りを『条件→判断→理由→例外』に整理する視点。
④氷山モデル思考:表面で止めず見えない真因まで掘り下げる姿勢。
⑤ツールの基本操作:NotebookLMやGeminiに資料を入れて質問すること。
今回はそのうち「逆質問の発想」「構造化の目」についてわかりやすく解説します。
TAKUMIプロンプトの逆質問は、「コツを教えてください」と直接聞くのではなく、角度を変えた問いで迂回するのが核心です。
ベテランは「何を聞けばいいか分からない」だけで、聞き方さえ変えれば答えは出てきます。その問い方を3種類に整理したのが「なぜ・もし・何点」です。
なぜ型 … 判断した瞬間に「最初に何を見た/聞いた/触ったか」を聞き、無意識の基準を引き出す
もし型 … 「反対の判断をしていたらどうなったか」を想像させ、判断の境界条件を引き出す
何点型 … 感覚を100点満点で数値化させ、「その差は何が原因か」で理由を引き出す
逆質問の具体例:射出成形で「温度を微調整する勘」を引き出す
まずAIに次のような指示(これがTAKUMIプロンプト本体)を与えます。
あなたは熟練技能を引き出す専門インタビュアーです。30年のベテランに聞き取りをします。ルールとして
①「コツを教えて」と直接聞かない。
②質問は一度に1つだけ。答えを受けてさらに掘る。
③「なぜ型(判断の瞬間に何を確認したか)」「もし型(反対の判断をしていたら)」「何点型(100点満点で今日は何点か、その差の理由)」を使い分ける。
④5〜7往復したら『条件→判断→理由→例外』の表に整理する。
テーマは「樹脂の状態を見て成形温度を微調整する判断」。
最初の質問から始めてください。
すると、AIはこう逆質問していきます(実際のやり取りのイメージ)。
AI〔なぜ型〕:温度を上げようと決めた瞬間、最初に目で確認したのは何でしたか?
作業者:樹脂のツヤと、ノズルから垂れる速さだね。
AI〔なぜ型〕:「垂れが遅い」と感じた基準は? いつもなら何秒くらいで垂れますか?
作業者:普段は2秒くらい。今朝は4秒かかってた。
AI〔もし型〕:もしそのまま温度を上げずに流していたら、製品はどうなっていたと思いますか?
作業者:たぶんヒケ(表面の凹み)が出る。
AI〔何点型〕:今朝の樹脂の状態を理想100点とすると何点でしたか? その差は何が原因ですか?
作業者:80点。前日より気温が低くて材料が冷えてたから。
AI〔例外を掘る〕:気温が低い以外で、同じ「垂れが遅い」状態になることはありますか?
最後にAIが、引き出した断片を次のように構造化します。
条件:朝イチで前日より気温が低く、材料が冷えている(垂れ4秒・ツヤが鈍い)
判断:設定温度を+5℃する
理由:垂れが遅い=流動性低下のサイン。放置するとヒケが出る
例外:湿度が低い日は吸湿が少ないため+3℃に留める
ポイントは、「温度を上げるコツは?」と一度も聞いていないのに、温度判断の基準(垂れ2秒→4秒)・しきい値・例外条件まで言語化できている点です。
これを新人が使える形にしてRAGに登録すれば、本人が辞めても同じ判断が再現できる、という流れになります。
では、もう一つ設備の異音での異常察知の具体例を見てみましょう。
設備の異音は、樹脂の例より「数値化しにくい」テーマなので、逆質問の「何点型」で感覚を点数化させるのが特に効きます。
回転機械(モーター+ベアリング)の例で作ります。
AIに与える指示(TAKUMIプロンプト本体)
あなたは熟練技能を引き出す専門インタビュアーです。
30年のベテラン保全担当に聞き取りをします。ルールとして
①「聞き分けのコツを教えて」と直接聞かない。
②質問は一度に1つだけ。答えを受けてさらに掘る。
③「なぜ型(異常と感じた瞬間に何を聞き分けたか)」「もし型(そのまま運転を続けていたら)」「何点型(正常を100点として今は何点か、その差の理由)」を使い分ける。
④音は「高さ・大きさ・リズム(周期)・混じり方」の4要素で具体化させる。
⑤5〜7往復したら『条件→判断→理由→例外』の表に整理する。テーマは「設備の異音でベアリング異常を察知する判断」。最初の質問から始めてください。
逆質問のやり取り(イメージ)
AI〔なぜ型〕:「いつもと違う」と感じた瞬間、最初に引っかかったのは音の高さですか、大きさですか、それともリズムですか?
作業者:高さだね。低い「ゴーッ」の中に、高い「シャー」が混じってた。
AI〔なぜ型〕:その高い「シャー」は、ずっと鳴っていましたか? それとも周期的でしたか?
作業者:回転に合わせて「シャッ…シャッ…」と一定の間隔で出てた。
AI〔なぜ型〕:普段の正常な音を言葉にすると、どう表現しますか?
作業者:低くて滑らかな「ゴーッ」だけ。引っかかる音はない。
AI〔もし型〕:もしその「シャッ…シャッ…」に気づかず運転を続けていたら何が、どのくらいで起きていたと思いますか?
作業者:たぶん数日でベアリングが焼き付く。最悪、軸まで傷つく。
AI〔何点型〕:正常を100点とすると、その時の音は何点でしたか?差の分は何の音が原因ですか?
作業者:70点。あの周期的な高音のせい。あれが出たらもう交換時期。
AI〔例外を掘る〕:同じ高音が出ても「問題ない」と判断するケースはありますか?
作業者:起動直後の冷えてる時は一瞬鳴ることがある。暖まって消えれば正常。
構造化された結果(条件→判断→理由→例外)
条件:起動して10分以上たち暖まった状態で、低い「ゴーッ」音に高い「シャー」が回転と同期して周期的に混じる
判断:当日中に運転を止め、ベアリングの点検・交換を手配する
理由:回転に同期した周期的な高音は、ベアリング内部の傷(転動面の損傷)のサイン。放置すると焼き付き・主軸損傷につながる
例外:起動直後の冷えた状態で一時的に出る高音は、暖機後に消えれば正常と判断する
ここでも「どんな音が異常ですか?」とは一度も聞いていません。代わりに「最初に引っかかった要素」「正常時との差」「放置した場合」「100点との差」を順に問うことで、音の高さ・周期性・しきい値(交換時期)・例外条件(暖機前)まで言語化できています。
音のテーマは、可能なら実際の録音を併用すると精度が上がります。
(「この音は何点か」をAIに点数化させ、判断基準を音声サンプルと紐づける)
録音活用の進め方も別の機会に解説したいと思います。


