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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

糖質制限の際に気を付けるべき事?

2017年3月31日

テーマ:ダイエットの秘訣

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 糖尿病 食事糖尿病 症状糖尿病 予防

糖質制限の際に気を付けるべき事?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「糖質制限の際に気を付けるべき事?」というお話です。
 健康人の間でも広まっている糖質制限だが、安易に導入する風潮を心配する医療従事者は少なくない。こうした声に対し、北里大学の山田悟先生は、「糖質制限をカロリー制限と誤解している可能性がある」と指摘する。山田先生は科学的根拠に基づいて、人々がおいしく、楽しく食事できて、その上で健康を増進できることを実現させるために「食・楽・健康協会」という組織的取り組みを展開しています。そこで定義する糖質制限を「ロカボ」と名付け、一般の人々や企業などの活動をサポートしているのです。
このような取り組みをしている理由は、日本人の中に「隠れ食後高血糖」なる人々がかなりいるとされるからです。日本人の通常量とされる1食100gの糖質を摂取する群(通常食群)と、摂取カロリーは多いもののロカボ食で糖質摂取量を1食30g程度に抑えた群(ロカボ食群)で比較するとロカボ食群の食後血糖の平均値は120-130mg/dL程度ですが、通常食群では空腹時血糖が正常でも、食後血糖は平均で180mg/dLまで上昇していたのです。つまり、健康診断で空腹時血糖が正常な健康な日本人の中に、いわゆる「隠れ食後高血糖者」が、かなりいると推定されます。食後高血糖は、酸化ストレスや動脈硬化にかかわり、臓器に対する負担は必ず起こっています。だからこそ健康人にも食後高血糖を抑える糖質制限の動きを広げた方がいいと考えられているのです。患者さんが最終的に糖質を摂取する量は、どうにもコントロールできませんが、糖質制限食を作る側の目安、あるいは糖質制限を指導する側の目安としては、1食当たり20-40g、嗜好品ならば10g/日。これで統一しておけば、迷う必要はありません。糖質制限の理解が足りない方はカロリー制限に対する理解も不足している傾向が強いようです。
3大栄養素である糖質、蛋白質、脂質のうち、糖質のバランスを変えれば血糖改善が期待できますが、カロリー制限食で蛋白質や脂質も減らされると懸念があります。血糖の改善には蛋白質と脂質を摂取していた方が良いというデータが色々と出ており、カロリー制限食で蛋白質と脂質の摂取量も減らされれば、血糖の上昇に対し促進的になってしまう。健康人であれ糖尿病患者であれ、日々の食生活でこれらのバランスを保ちつつカロリーの摂取量を抑えた食事を続けるのは、現実的には難しく血糖値の上昇に繋がりかねません。だからこそ、糖尿病治療に対しては糖質制限食が良いと考えられる訳です。糖質制限で肥満の人では減量効果が認められ、肥満の有無にかかわらず、中性脂肪の改善効果があります。また、肥満の解消を介しての2次的効果であろうと考えられますが、血圧の改善も示されています。
 以前は学会等でも糖質制限よりもカロリー制限が重要という風潮ではありましたが、最近ようやく糖質制限の有効性、さらには安全性も確立してきた感があります。糖質はある意味では絶対的に必要な栄養源ではありますから極端な制限は当然、体に支障を来す可能性もありますし、制限した分のカロリーを何で補うかも問題となります。糖尿病患者さんであれ、そうでない方であれ減量を考える方々には栄養素のバランスも考えたある程度の糖質制限が有用であるのは間違いありません!
    
17.3.30 吾妻小富士
 昨日の吾妻小富士。山頂付近の雪も少しではありますが、融けてきている感じです!

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佐藤浩明

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