福岡の偉人:福岡市 評価が分かれ続ける男・頭山満
秋になると、
田んぼのあぜ道や
お墓のまわりに、
赤い彼岸花が咲きます。
この花を見ると、
「ああ、秋だな」
と思います。
ところが、
彼岸花のことを少し調べてみると、
秋の風情どころではありません。
とにかく悪口を言われすぎ。
花につける名前じゃない。
彼岸花には、
いろんな呼び名があります。
死人花。
地獄花。
幽霊花。
剃刀花。
狐花。
捨子花。
……こんな名前を次々つけたのは誰ですか?
しかも、
どれもこれも怖い。
花なのに、
口コミ評価がだいぶ厳しい。
とはいえ、
墓地や田畑のまわりに
彼岸花が多いのには、
ちゃんと理由があります。
嫌われていたのではなく、働かされていた。
彼岸花には毒がある。
その毒を利用して、
昔から田畑を荒らす動物を遠ざけたり、
墓を荒らされるのを防いだりしてきました。
つまり、
「役に立つから、そこに植えた」
……なんだ。
めちゃくちゃ実用的じゃないですか。
しかも、
毒は使い方によって薬にもなる。
古くから薬として利用され、
彼岸花の仲間に含まれる成分は、
現在ではアルツハイマー型認知症の治療薬の原料にも使われています。
……地獄花です。
死人花と言われます。
幽霊花とも言わてますよね?
……ずいぶんと社会貢献してます。
評価と実績が、まったく噛み合っていない。
彼岸花は、田畑を守る。
墓を守る。
薬にもなる。
なのに、つけられた名前は、
地獄。
死人。
幽霊。
……実績よりイメージが強い。
これ、どこかで見たことがある。
「あの人、ちょっと怖そう」
「あの人、感じ悪そう」
「なんとなく苦手」
一度そう思ってしまうと、
その後に何をしていても、
最初の印象がついて回る。
ちゃんと仕事をしていても、
助けてもらっても、
「でも、あの人って……」
となる。
評価というのは、
ずいぶん気まぐれです。
彼岸花なんて、
その最たるもの。
毒がある。
墓に咲く。
だから怖い。
……いや。
その毒、ちゃんと役に立ってます。
しかも、
本人は一切弁明しません。
「私、そんなに悪い花じゃありません」
とも言わない。
「誤解なんです」
とも言わない。
まして、
「私のことをもっと知ってください」
なんて、SNSを始めたりもしない。
ただ咲いている。
説明しない花は、強い。
人間は、
誤解されると説明したくなります。
違うんです。
そういう意味じゃないんです。
本当はこうなんです。
……と、
どんどん説明する。
説明しているうちに、
最初の話から遠ざかっていく。
気づけば、
誤解を解くための説明で、
新しい誤解を生んでいる。
その点、彼岸花は潔い。
「好きに呼べば?」
そんな感じで、
今日も咲いている。
地獄花と呼ばれようが。
死人花と呼ばれようが。
幽霊花と呼ばれようが。
田んぼの脇で、
何事もなかったように赤く咲いている。
そして、
人間に名前をつけられ、
人間に怖がられ、
人間に役立てられながら、
今日も秋風に揺れている。
……なんだか、
いちばん人間関係がうまいのは、
彼岸花かもしれません。



