仲間に入れない
なくても、別に困らない。
そう思っていたものがある。
使っていない。
なくても、生活はできる。
だから、
「なくなっても別にいいよね」
と思う。
ところが、
本当になくなる。
……あれ??
なくなる前は、存在すら気にしていない
たとえば、近所にあった店。
つでも行けると思っていた。
だから、
特別ありがたがることもない。
「また今度行けばいい」
そう思っているうちに閉店。
すると、
「えっ。もうないの?」
急に惜しくなる。
昨日まで、
そこにあったのに。
しかも、
最後に行ったのはいつだったか思い出せない。
……使ってなかったくせに。
なくなった途端、
思い出まで急に大事になる。
「別にいらない」は、存在している間だけ強い
昔は、公衆電話があちこちにあった。
今なら、
スマホがある。
だから、
「公衆電話なんて、そんなに使わないよね」となる。
実際、使わない。
でも、震災などの災害時。
スマホの電池が切れた。
電話をかけたい。
……公衆電話どこ?
急に探し始める。
普段は、そこにあっても見向きもしない。
必要になった瞬間だけ、
「昔は、あそこにあったのに」
と記憶を掘り起こす。
人間の記憶、
ずいぶん都合よくできています。
なくなって初めて、仕事をしていたことに気づく
これって、物だけじゃない。
店も。
サービスも。
仕組みも。
誰かの仕事も。
あるときは、
「まあ、なくてもいいかな」
と思っていたもの。
いざ、なくなってみると、
「あれがあったから、困らなかったんだ」
と気づく。
存在している間は、
何もしていないように見える。
でも実際は、
「困らない」という仕事をしていた。
これ、かなり地味です。
拍手もない。
感謝もされない。
でも、なくなると困る。
人間の判断は、だいたい後払い
なくなる前は、
「別にいらない」。
なくなったら、
「なんでなくしたの?」
……どっちなんだ。
発見する頃には、もう手遅れ。
なくなるまでは、
見向きもしない。
なくなった途端、
「大事だった」
と言い出す。
……勝手なもんです。
昨日まで邪魔だったものを、
今日は「貴重だった」と言い始める。
人間の価値判断、
ずいぶん後出しです。
しかも、
なくした本人が、一番惜しんでたりする。
……私も、
気をつけよう。
と言いたいところだけど、
たぶん何かなくなったら、
また言う。
「前は、あったのに。」



