家族を支え続けるときに考えたい「ケア・サステナビリティ」という視点-ケアの意味を問い直す

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:ケアラー支援

家族を支え続けるときに考えたい「ケア・サステナビリティ」という視点-ケアの意味を問い直す

サステナビリティという言葉を聞くと、SDGsを思い浮かべる方も多いかもしれません。
ケアをしていると、この言葉をもっと身近なこととして考えたくなる瞬間があります。たとえば、今の自分たちの暮らしに引き寄せて考えたくなるのです。
早く落ち着いてほしい。安心したい。今より少し楽になりたい。
そう願う一方で、今なんとか成り立っている生活が崩れるのも怖い。
だから毎日を回すことに集中する。でも気づけば、「続けること」そのものが目的のようになってしまう。
そんな時にふと思いました。
私たちは、ケアそのものの方法だけではなく、「ケアをどう続けるか」を考えてもいいのではないか。
今回は、サステナビリティ(持続可能性)という考え方を、家族ケアに持ち込んだら何が見えてくるのか、一緒に考えてみたいと思います。


1.サステナビリティとは


「サステナビリティ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
日本語では「持続可能性」です。SDGsで使われる「S」ですね。

では、持続可能性とは。
「現在の活動や仕組みを、将来にわたって無理なく維持・継続できる状態や考え方」のことです。

そして先ほども例に挙げたSDGsでは、

  • 現在の必要を満たすこと
  • 未来の選択肢を奪わないこと
  • 負担や資源を使い切る前提にしないこと


を重視しています。

つまりサステナビリティ、持続可能性とは、ただ「長く続ける」ことを重視した概念ではありません。
へとへとのよれよれのジリ貧になることを避け、絵に描いた餅を求めるのでもなく、長く続く将来まで見据えて「今」を考えましょう、ということなんですよね。

2.ケアラーにとっての「サステナビリティ」とは


サステナビリティの

将来にわたって
無理なく維持・継続出来る

という部分は、まさに私たちケアラーにとっても重要なスタンスではないでしょうか。

心の病は、一時的な病状で終わりません。
なぜなら外から来たウィルスが原因でもないし、外科手術で問題の部分を切り出す、ということも出来ない。
回復しても、復職できても、何かしらの形でケアは継続していく。

続けること自体が目的ではありません。
ケアを続けることが、生活を守ることに直結する。だから「続けざるを得ない」。

その続け方が、まさに私たちの悩みの種なんですよね。

  • 家事
  • 仕事
  • 収入を得ること
  • 人間関係
  • 健康・体力
  • メンタルヘルス


その全てをどう使うか。
そしてどんなスタンスで使い方を考えるのか。

まさにケアラーにとってサステナビリティほど必要な概念はないのかもしれません。

<おすすめコラム>一人で抱え込む覚悟を見つめ直す ―辛いと感じる理由と、守ってきたもの―
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3.ケア・サステナビリティ権という考え方


ケアラーにとっても重要な「サステナビリティ」。
つまり無理なく必要な期間、今の状態を維持し続ける、というスタンス。

でも今まで、自分たちに対して「サステナビリティ」を考えたことはありますか?
少なくとも私はありません。

サステナビリティという言葉や概念が比較的新しいものだということもあります。
それに「持続」という概念が、むしろ重荷としか感じなかったからです。

だって今の状態がそのまま続くってことじゃないですか。
考えたくないですよね。

でも多分、サステナビリティが言う「持続」ってそう言うことじゃないんですよね。
私たちケアラーの負担や不安の「持続」ではなくて、今成り立っている生活の「持続可能性」のほう。
これをキープするために、今している「無理・我慢・忍耐・無茶」をどうやってやめて違う方法と入れ替えていくか、ってことですよね。

だって私たちケアラーが無理してやっと維持継続できる状態は、サステナビリティとは言えませんから。

だから私が考える「ケア・サステナビリティ権」とは。
「持続させる」ものの中に自分自身の心身の健康や将来の展望を含めた上で「持続可能性を探る」ことに罪悪感や遠慮を抱かないこと。

サステナビリティを実現させるためには、病気の家族だけに限定せず、自分も含めて考えることです。

あなたはどう考えますか?

4.ケアに「持続可能性」を持ち込むと、何が変わるだろう


私たちって、結構矛盾した目標を抱えてるんですよね。

早く家族に元気になって欲しい。病気や障害を抱えたままでも出来ることが増えてほしい。そして安心したい。
「少しでも早く」「ケア期間を短くしたい」のが本音です。

その一方で「今なんとか持ちこたえている生活が崩れる」のも怖い。だから維持したい。

方向性は同じでも頭に浮かぶ言葉の性質が矛盾しているんですね。だから分からなくなる。
早く変わって欲しいのか、今を守りたいのか。

この矛盾を解くカギが「サステナビリティ」なのかな、と思いました。

何度もお話している通り、サステナビリティ(持続可能性)とは「現在の活動や仕組みを、将来にわたって無理なく維持・継続できる状態や考え方」です。

私たちの問題を分解すると、こんな感じかもしれません。

状態:家族がメンタルの病気になった
問題:支え続けて疲れて限界を感じ始めた
希望:辛くなく、出来る範囲で支え合いながら生活していく


だとすると、手を加えることが出来るのは「問題:支え続けて疲れて限界を感じ始めた」部分ですよね。

これはまさにサステナビリティのいうところの「将来にわたって無理なく維持・継続できる状態」に変えていくことが出来るのではないでしょうか。

5.「続けること」と「続け方を考えること」は同じだろうか


そしてもう一つ、私たちが混同しやすいのが「続ける」と「続け方を考える」ことかもしれません。

「続ける」は行為行動ですね。
毎日の生活を回し、衣食住を整え、家族と向き合い、自分の仕事やタスクをこなす。
これは毎日必ず発生することだから止めることは出来ません。

ですがこれを半自動的に繰り返していくことで、無理が溜まっていく。判断が出しづらくなる。長く続けば動けなくなります。

「じゃあどうしたらいいの?」ですよね。
私も何度も心の中でつぶやいていました。
今のやり方が正しいと信じてるわけじゃない、でも自分に出来る精一杯が今の状態なのだから、もっと頑張るなんて出来るはずがないじゃないか、と。

私は「何をやるのか」、行為行動だけを考えていました。

ここに「サステナビリティ」を突っ込むと、違う視界が見えて来ませんか?
「続ける」スタンスを考える。
やり方じゃなくて、「どう続けたい」のか。
色んな「どう」があると思いますが、多くのケアラーに共通するのは「今みたいな限界ギリギリは嫌だ」だと思います。

では、限界ギリギリにならず、今の生活をキープしてケアを続けるってどういうことでしょうか。
自分達なりの「続け方」を考えた時、自分たちの生活はどう変化するでしょうか。


【図】「続けること」と「続け方を考えること」


6.自分たち家族にとっての「ケア・サステナビリティ」とは



ここまで読んでくださった方に、一つ問いを置いて終わりたいと思います。

あなたにとって、ご自身の家族にとっての「ケア・サステナビリティ」とは何でしょうか。

出来るだけ長く支え続けることなのか。
今の生活を崩さないことなのか。
少しずつ回復していくことなのか。
あるいは、自分自身の人生や健康も守りながら関わり続けることなのか。

もしサステナビリティという考え方をケアに取り込んだ時、私たちが考える対象は「ケアを続けるかどうか」だけではなくなるのかもしれません。

どんな状態を持続させたいのか。
そのために、今の続け方は自分たちに合っているのか。

そんな問いも、選択肢として持てるようになるのかもしれません。
だからこそ、自分たち家族にとっての「ケア・サステナビリティ」とは何か。
一度立ち止まって考えてみてもいいのかもしれません。


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西岡惠美子
専門家

西岡惠美子(カウンセラー)

惠然庵(けいぜんあん)

◆うつ病患者家族支援…うつになった家族を支えるご家族を支えます(家族側のカウンセリング・コーチング)◆自分軸構築コーチング…充実した人生の土台となる「自分軸」の構築をお手伝いします

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